面白かった!!
これこそアクションエンターテインメント小説!久々にスカッとした小説を読んだな~☆
実を言うと松岡圭祐先生の小説を読むのは初めてです。そうあの有名な『千里眼』シリーズも『万能鑑定士Q』シリーズも読んだことはないのです。
では、なぜ本書から?という質問には、そうですね・・・。ヒロインのキャラ紹介が秀逸だったからでしょうか。
この本書のヒロイン・優莉結衣(ゆうり・ゆい)は公立高校に通う高校2年の女子校生。平凡な女子校生かといえば、とんでもない。彼女は平成最大のテロ事件を起こし既に死刑となった男の娘という超いわく付きのJKなのです。
この父親というのは読者が読めばすぐに分かるのですが、地下鉄サリン事件の首謀者がモチーフとなっていて、過去にはサリン事件だけではなく、数々の反グレ集団を束ね、日本中で国民を震え上がらせるような数々の凶悪事件を起こしたグループの首領という設定になっています。
そんな優莉結衣は幼少の頃から、父親やその周辺の大人達から彼らの特技の数々を教え込まれており、言うなれば天才的暗殺マシーンに育て上げられてしまったのです。
そんな彼女ですが、現在は、施設で穏やかに暮らしています。
頭も良く、語学も堪能、そして銃器の扱いも格闘術も、身の回りの物を使って爆発物を作るのも大得意、そして当然のように超絶美少女(←男性読者的にはここ、一番重要ですねw)。
そんな彼女が通う武蔵小杉高校では、彼女は当然浮いた存在、誰もが腫れ物を触るように、あるいは声高に『凶悪犯罪者の娘』というレッテルを貼られて、日々の高校生活を送っています。
そんな武蔵小杉高校には、あるバトミントンのスタープレーヤーがいます。ベトナムから日本に帰化し、来年の東京オリンピックでは金メダルの有力候補となっている男子高校生。
彼に会うという名目で総理大臣が武蔵小杉高校へ視察に訪れることになったのですが、総理大臣が武蔵小杉高校に視察へ訪れた際、謎の武装勢力がこの高校を占拠しまうのです。
そんな状況で優莉結衣が取った行動は・・・・・・日々『迫害』とも言えるような状況におかれていた彼女にとって、この状況はまさに「水を得た魚」。
彼女の胸がすくような活躍が繰り広げられます。
これ、ホント面白い。
特に今読むからこの小説、面白いんだよね。今の世相のパロディ満載。
舞台はまさに今、この瞬間。来年2020年に東京オリンピックを控えている時期で、総理大臣は誰が見ても安倍首相そのもの、もちろん安倍首相という名前ではありませんが、山口県出身の65歳で、首相を連続3期勤めており、リオ五輪ではマリオの仮装をして、世界中を驚かせたというエピソードもそのままです。
ただ、この本の中ではこの首相は、殊更「バカな総理大臣」とも、もの凄く「マッチョな総理大臣」だとも描かれてはいないので、読者はフラットな感じでは読むことができます。
なんにせよ、ここは優莉結衣の活躍を何も考えないで愉しむのが、読者のスタンスでしょう。
「戦う美少女ヒロイン」と言えば、古くは『風の谷のナウシカ』まで遡ることができるでしょうか。その後は、セーラームーンやプリキュアなどの魔法少女系ヒロイン、そして『エヴァンゲリオン』の綾波レイやアスカ・ラングレーなどのパイロット系ヒロインに繋がると思いますが、いずれのヒロインも『正義の味方』的立ち位置にいると思います。
いや、戦うヒロインの元祖は『キューティーハニー』だとか『リボンの騎士』だとかというような声も聞こえてきそうですが、ここはそれを論争する場所ではないので「その話は今日はやめておきましょう」(笑)。
話を戻すと、いずれも『正義の味方』的位置に立つ戦うヒロインですが、この優莉結衣はまったくもって『正義の味方』的位置にはいません。まさに生まれながらにして「ダークヒロイン」の名を欲しいままに活躍してくれるのが、この『優莉結衣』というJK。いままでいそうでいなかったヒロイン像です。
まあ、当然ですよね。
いかに極悪人とは言っても、父親は日本政府に処刑され、子供の頃から自分のことを実の親以上にいろいろと世話してくれた幹部連中も一緒に死刑。そんな彼女に「日本政府を恨むな」とか「品行方正に暮らせ」と言ってもそれは酷というものです。
ですので、この日本政府の一大事に優莉結衣に「総理大臣を助けよう、救おう」というモチベーションはまったくありません(笑)。「自分にちょっと優しくしてくれた同級生を助けてあげよっか」というくらいの価値観と「死ぬべき人でない人を殺すのは良くない」というごくごく普通の常識、そして自分の能力を存分に発揮できる喜びという感情だけで武装集団と戦います。
「3歳から楽器の演奏を習っていた子供が成長するたびに大舞台で演奏したくなるのと同じように、自分が3歳の時から習得した技術を披露したくなるのと同じ気持ち」とこの状況を優莉結衣が楽しんでいるのをみて「異常」を通り越してもはや「天晴れ」と言いたくなります(笑)。
そして、この小説内で繰り広げられるアクションの数々と本作品がオマージュした『ダイ・ハード』や『トイ・ソルジャー』といった映画への評論など、ちょっとしたアクション映画ファンなら「にやり」とする場面がちりばめられています。
荒唐無稽なアクション小説と言ってしまえばそれまでですが、本書は一度読み出したら一気読みするのは確実です。
戦う女子高校生が主人公ですので、読む前はエログロ描写が酷いかなと思ったのですが、意外に微グロ微エロ程度の描写で、そういった描写が苦手な人にも安心です(笑)。
僕はもう、本作1作で完全に優莉結衣ファンになってしまいましたよ。
もう既に2作目、3作目が刊行されているので、ぜひ続編も読んでみようと思います。
- 感想投稿日 : 2019年10月28日
- 読了日 : 2019年10月27日
- 本棚登録日 : 2019年10月28日
みんなの感想をみる