ベルサイユのゆり -マリー・アントワネットの花籠- (新潮文庫nex)

著者 :
  • 新潮社 (2019年8月28日発売)
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感想 : 23
5

『マリー・アントワネットの日記』が非常に面白かったので、続編的スピンオフ短編集である本書も手に取ってみました。

やはり、面白いですね~。
本書は、マリー・アントワネットの友達というか取り巻きの一人であったランバル公妃がフランス革命で命を落とした後、幽霊になってマリー・アントワネットの周囲にいた人物一人ひとりにインタビューしていくという形式をとった短編集です。

本編で活躍した(?)デュ・バリー婦人やポリニャック婦人等のお馴染みの人物はもとより、マリー・アントワネット専属の髪結い師や肖像画師、そして主席侍従などあまり本編には登場しなかった人物から見たマリー・アントワネット像なども垣間見れて非常に興味深かったですね。

本編では、マリー・アントワネットのまさかのギャル口調には驚かされましたが、本作ではマリー・アントワネット本人は登場しないのであの独特の口調を楽しむことはできません。
ですが、筆者得意の斜に構えた文体は本作品でも健在です。特にマリー・アントワネットの娘で唯一、生涯を全うしたマリー・テレーズへのインタビューではあの語り口を彷彿とさせる語りぶりで、小気味いいものがありました。

本編と同じように、本書を執筆する際にも著者はかなり参考文献を調べているようなので、本作もファクトチェックはしっかりとなされているのでしょう。
フランス革命後の歴史を勉強する際にも役立ちそうです。

本作は、続編といっても良いようなできなので本編『マリー・アントワネットの日記』を楽しまれた読者であれば、ぜひおすすめします。

この本の裏表紙の紹介には「百合文学」なんて書いてありますが、僕が本書を読んだ分にはそのような雰囲気はほとんど感じられなかったので、ちょっとこの紹介文を読んで敬遠していたような人がいたら「そんなことはない!百合文学などではなく正当な続編だ!」と声を大にして言いたいので、安心して読んでもらいたいと思います。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説(エンターテイメント)
感想投稿日 : 2020年1月19日
読了日 : 2020年1月16日
本棚登録日 : 2020年1月19日

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