リターン (幻冬舎文庫)

著者 :
  • 幻冬舎 (2015年11月6日発売)
3.54
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本棚登録 : 2057
感想 : 185
4

本書は、読者を恐怖のどん底にたたき落としたストーカーホラーの大傑作『リカ』の続編。
うん、やっぱりこの作者の五十嵐氏はサイコ・スリラーを書かせたらピカイチだわ。
評価は☆4つだけど、その内訳は前半3分の2が☆マイナス1で、後の三分の一が☆5つでトータルで☆4つですね(笑)。
やっぱり、リカ様が出てこなくちゃ始まりませんよ、このお話は。

本書は、前作の『リカ』から10年後の世界で1作目の主人公の本間の遺体が発見されたところから始まります。前半の評価が異様に低いのは話の主体がリカを捜査している警察だからなんだよね。
これがひどいのよ、いや、登場する主人公の女性刑事が悪いんじゃなくて、その警察サイドの設定がさ、もう目の肥えた警察ミステリファンが読んだら、本に火を付けて火葬にしてると思うよ。
僕が読んでも、印刷ミスを疑うレベルでひどかった。例えば、警視庁捜査第一課の課長の階級が「警部」だったり、新人警察官の最初の配置先が所轄の警察署じゃなくて捜査一課だったり、その刑事が10年間も捜査一課にそのまま居続けたりと、まあ、特別捜査官ならあり得るかもしれないけれど、そんな描写もないし「この作者、なにも調べて書いてないなあ」とありありと分かっちゃうの。
でも筆者の名誉の為に言っとくけど、2002年の『リカ』発表の次の年、2003年に出版している著者のもう一つの人気シリーズ『交渉人』ではちゃんと参考文献に警察関係の本が載っているからちゃんと調べているのよ。で、なぜ2013年に出した本書がこうなっちゃうのよって感じなのですよ。今筆者が書いている警察小説でもきっちり警察のこと調べて書いているから『リカ』シリーズだけは手を抜いているのかもしれない(笑)。

まあ、文句はここまでにして、本書の後半、リカ様が登場してからはもう凄いよ。
実際、読む手が震えちゃったもの。もう1作目の『リカ』の恐怖が蘇ってきて、もう完全にトラウマになってるね(笑)。本書の最後の四分の一は読むスピードが約1.75倍(本人比)だったもの。そして、この驚愕のラストシーン。うん、読ませる(笑)。

ああ、読ませるわ~。もう警察のシーンのずさんさとか、たぶん、筆者がわざとやっているんだと思う(笑)。訳分からない警察の描写とか読ませて読者を煙に巻いておいてからの、思いっきり恐怖のどん底に落とすこの手法。思いっきりやられます。

結論として『リカ』の続編として完璧です。
そして最後シーンの主人公の女性刑事の満ち足りた笑顔。こちらもまたトラウマです。
僕の脳内映像では超実力派女優の門脇麦さんが熱演してくれました。眼帯ごしに見える彼女の笑みは、まさに第二のリカの誕生を彷彿とさせてくれるものがあります。

という訳で、第2作がこういう終わり方をしてしまうと第3作、第4作ってどんな話になるのだろう。リカ誕生の秘密を描くのだろうか。これまた、読まなきゃいけないじゃないですか~。期待度マックスですね(笑)。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説(エンターテイメント)
感想投稿日 : 2019年9月2日
読了日 : 2019年8月25日
本棚登録日 : 2019年9月2日

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コメント 2件

たけさんのコメント
2019/09/02

kazzu008さん、お久しぶりです!
リカとともにリターンしてきましたね(笑)

リカシリーズは夜一人では読めないですね。
なぜあんなに怖いのか?
リカの恐怖の深層は第3作、第4作を読むとはっきりするのかもしれないですね。
確かに期待度マックスです。
噂によると第5作も近々発売とか。

kazzu008さんのコメント
2019/09/03

たけさん、こんにちは。戻ってきました!
コメントありがとうございます。
今回のリカも怖かったですね。
でも、たけさんもレビューで書かれていたように確かに恐怖感は1作目にはかなわないですよね。
でも、怖い。この怖さはやみつきになります(笑)。
3作はやはりリカ誕生の秘密に迫っているらしいですね。
おお、5作もでるのですか、リカ・ワールドが広がりますね。楽しみです!

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