テロリストの誕生: イスラム過激派テロの虚像と実像

著者 :
  • 草思社 (2019年10月21日発売)
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感想 : 7
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本書はノンフィクション・ドキュメンタリー。
2015年1月フランス、パリで発生したシャルリー・エブド襲撃事件、2015年11月パリ同時多発テロ事件、2016年7月に発生したフランス、ニース・トラック暴走テロ事件などのテロ事件を著者である朝日新聞社記者・国末憲人氏が詳細にルポしたものである。
著者は現在、朝日新聞ヨーロッパ総局長である。

普通のEU市民が、どうして凶悪なテロリストに変貌したのだろうか。

著者はシャルリー・エブド襲撃事件、パリ同時多発テロ、ブリュッセル連続爆破テロ、ニース・トラック暴走テロ等を通じて、現地取材をもとにテロリストが誕生した過程と背景を探り、テロリストたちの思考回路を明らかにしていく。

〇 メディアがその言論ゆえに標的となった〈シャルリー・エブド襲撃事件〉
〇 街角のカフェや劇場が突如、戦場の様相を呈した〈パリ同時多発テロ〉
〇 EUの拠点で空港・地下鉄がターゲットになった〈ブリュッセル連続爆破テロ〉
〇 海岸沿いの遊歩道に憩う86人の命を一気に奪った〈ニース・トラック暴走テロ〉

新聞記者として海外特派員を長く勤めた著者であるからこそ、著すことが出来た本書である。
この本を読むと、テロリストたちがいわゆる本当のイスラム原理主義者ではなく、どちらかといえば、社会からドロップアウトしてしまった犯罪者であったということがうかがえる。犯罪歴があり、まともな職につけず、昼間から街をぶらぶらとしていたところ、過激思想をもった人物に声をかけられて洗脳されてしまう。

筆者がいう

テロリストになった彼らは、暇でやることがなかったからテロリストになってしまったのだ

という言葉がいかに重要なことを示唆しているかを思い知らされた。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ノンフィクション
感想投稿日 : 2020年2月8日
読了日 : 2020年1月27日
本棚登録日 : 2020年2月8日

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