テレビアニメ化をされたのを機に購入。初めて読んだ竹宮作品であり、実質私にとっては24年組の洗礼ともなった日本SF漫画の傑作。
萩尾先生の「精霊」シリーズを読んだ時も感じたことだけれど、この作品が描かれた70年代という時代、見識のある漫画家の間では「人類の進歩」とか「新人類」とかいう問題意識が一般的に共有されていたのだろうか。SFというジャンルがとりわけお好きな二人だからこその功績という気もするけれど、それにしてもこれだけのものを当時新進気鋭の少女漫画作家であった竹宮先生が描き切ったというインパクトはすごい。70年代という時代を知らない自分でも、当時の社会が受けた衝撃をひしひしと肌で感じることができるような気がする。しかもこれ、当時は少年漫画誌に掲載されていたということだし…まだまだ「創作の主体」という意味では、女性作家がSFから切り離されていた時代だったんだろうなぁ。
ストーリーそのものの感想としては、読み進めるのに非常に苦労したという記憶がある。設定が難解だとかいうことではなく、全体に漂うあの何とも言えない悲壮感に中てられてしまって、なかなか最後までいくのが辛かったのだ。竹宮先生の作品って、これにしろ『風と木の詩』にしろ『天馬の血族』にしろ、なぜだか個人的には異常に読みづらい。1ページずつにものすごい集中力を必要とされるというか、1コマ1コマに一体作者がどれだけの情報を、伝えたいメッセージを詰め込んでいるのだろうと考え出すと、間違ってもぱらぱら斜め読みして終わるだなんてことができない。何かこう、作者自身が持っているより壮大で細密な世界イメージを、アウトプットの過程でぎゅぎゅっと濃縮変換したまさにイマジネーションのどろどろとした熱いふきだまりみたいな印象がものすごくあって、だから丁寧に扱わないと読んでいるこちらが火傷してしまうというか、他の漫画作品以上に真摯に向き合うことを作品側から要求されているような気分になる。べつに高尚というか、お高く止まってるイメージは全然ないんだけど、なぜだかものすごく頭を使わされる。というのは、もちろんあくまでも個人的な印象ではあるのだけれど。
- 感想投稿日 : 2010年5月27日
- 読了日 : 2010年5月22日
- 本棚登録日 : 2010年5月22日
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