櫻子さんの足下には死体が埋まっている (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA (2013年2月23日発売)
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本棚登録 : 2381
感想 : 204
5

旭川が舞台と聞いて、読んでみた。

「ライトミステリ」なるジャンルを初めて読んだ。
確かに、全体的に雰囲気が軽く、読みやすい。

主人公の少年は平凡な高校生で、RPGの主人公(笑)のようにキャラが薄く、ありがちな設定。
一方、タイトルにもなっている櫻子さんは、「骨好きのお嬢様」という風変わりな設定で、そのキャラを生かして物語が進行していく。

しかし、登場する各人物の描写が甘いために、誰の台詞か分からないものがあったり、会話の流れに違和感があったりする部分が何点かあった。
読んでいて、文章の構成を直したい衝動に駆られてしまう。

ストーリーやミステリ要素も、ありがちなものに感じられた。

一方で、テーマである「骨」と「北海道」に関しては、よく調べられていて説明も分かりやすかった。

特に旭川ネタについて、ザンギ、ゆめぴりか、ななつぼし、ほしのゆめ、などなど名産の美味しい食べ物の描写がでてきて、食欲がわいてくる。
他にも、「夕方の地元情報番組」って「どさんこワイド」か?とか、「道内経済誌」って「北海道経済」か?とか、地元ネタが色々と分かってしまっておもしろい。

増毛のエビもおいしそうで、とてもよい。

こんなにローカルネタ満載の本が、全国で売られていて、「王様のブランチ」などでも紹介されていることに驚きである。

「僕は時間の死んだ街で生まれた。「良くも悪くもマイペースで強情で、変化を嫌うこの街では、澱んだ時の流れすら平穏だとか、安寧と呼ばれる。変えられない、変われないのでは無く、そもそも変えたいと思わないのだ。まるで大腿骨のように強靭なまでの真一文字さが、この街には絶えず横たわっていて、人々の心までせき止めている気がする。」
「この街には、いたる所に退廃や、停滞といった、鈍重な空気が漂っている。」「旭川の人間は、生来変化と異端を嫌うのだ。」

まさにそのとおり。

そんな旭川でも、このような小説の舞台になるということに驚き、喜ばしく、誇りに思う。

旭川関係者にも、北海道好きにも、ミステリ好きにも、いろいろな人に読んでもらいたい小説。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2014年7月25日
読了日 : 2014年7月25日
本棚登録日 : 2014年7月25日

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