世界の名著〈続 10〉ショーペンハウアー (1975年)

制作 : 西尾幹二 
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感想 : 2
5

1巻の認識論は、脳科学の知見にマッチしていて、そこから考えるとカントさんの認識論よりもスッキリ整理されている気がした。特に気に入ったのは、真の時間は現在しかなく。過去は体験の記憶であったり時間の抽象化によって生まれる概念で、未来は時間や経験を抽象化することでしか生み出せない概念だということがわかり長年の疑問が解けた。
2巻では、人間の感覚ではそのすべてをとらえることのできない世界そのものを個々人の意識に現れる「意志」を手がかりに導き出すという荒業が披露されているのだが、そういう考えもあっていいと思う。おもしろかった。
3巻の芸術論もスッキリしていてわかりやすい。芸術作品は、この世界のさまざまなイデアを鑑賞者に観想させることのできるものであるという定義はスッキリしすぎているかもしれないがとても有効な定義だと思う。特に演劇について書いてある件はとても参考になった。
4巻のこの得体のしれない世界でどう生きてゆくべきかという実践は、非常に現実的でとても納得のゆくものだった。
ただ、そこまで闘争的にとらえなくてもいいのではないかとその苛烈さにはちょっと気が引けた。

Mahalo

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 哲学
感想投稿日 : 2014年7月30日
読了日 : 2014年7月27日
本棚登録日 : 2014年6月20日

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