文章というのはいつまでたっても上手くなった気がしない。うまくなるためには書く必要があるのだが、上手くないから書く気にならない。
この悪循環を断つためには、どうやって書くか?という指針が必要なのだ。文章法の本はたくさんあるが、この本はその中でもカジュアルでとっつきやすい本の一つだと思う。
著者は書くことは、頭の中をぐるぐると回っている考えを「翻訳」する作業だという。
なるほど、他の言語で聞いたことを誰かに日本語で説明する作業には、「この相手にこう行ったら伝わるかな?」というフィルターがかかる。書くことは伝えることなのだから、こういう観点で書けばいいのか。
本書には、その翻訳のためにテクニックが紹介されている。例えば、著者は取材から帰ると誰かに5分でもいいからその内容を話すことによって、「翻訳」の第一歩を行うという。sの中で、話の内容の再構築・内容の再発見・自分の反応の再認識を行う。自分の言葉で捉え直すことで「翻訳」ができる。これは絵や地図を言葉で説明することによってもトレーニングできるという。
本書での「翻訳」のための文章テクニックは以下にまとめられる。
1.読みやすい文章はよい文体(リズム)で構成されており、それはすなわち論理展開が明快だということである。
2.起承転結、序論・本論・結論などの全体の文章構成を意識する。その中でも論理的な構成として、主張-理由-事実という3段階の構成を考える。
3.読者の「椅子」に座って書く。すべての読者は素人だと思って書く。
4.推敲は「何を書かないか」が大事であり、もったいないを禁句としてハサミを入れていく。
1に関しては、端的にいうと文章ごとの論理的なつながりをきちんと意識して書くということである。リズムと言っても音の話ではなくて、すんなりと頭に入ってくる文章とは文章ごとにつながりが明確になっているということ。
2は、多くの文章本で言われていることだが、改めて重要だと思った。「考える技術書く技術」で言われてるピラミッド構造がそれに当たるが、著者はもっとシンプルな「マトリョーシカ構造」と銘打って主張-理由-事実の段階構成を説いている。
特に「すべての文章には主張が必要である。(出ないと読んでいて面白くない。)」というところには感銘を受けた。当たり障りない、批判されない文章を書いてしまう自分であるが、そんな文章は読むに値しないのである。
3は、読者の「椅子」というのがポイントで、ただ立場に立つ意識ではなく、同じ目線で見ることを強調している。特に、読者を特定の一人を想像して書くという点は筆を進めるためには良いアドバイスだと思った。
4の推敲については、特に新しさを感じなかったが、重要な点が強調してあると思う。どうしてもせっかく書いた文章を添削、特に削るのには抵抗があるので、思い切って削る勇気を持てるかどうかがポイントになる。書いてから少し時間を置くのもテクニックの一つである。
全体としてさらっと読めるのは、内容の通り文体(リズム)が良いからであろう。しかし、文章を書く際に意識すべきことが詰まっているので、書けないときに読んで見る一冊、きちんと文章の書き方を学んでこなかった人にまず勧める一冊だと思う。
- 感想投稿日 : 2019年1月13日
- 読了日 : 2019年1月10日
- 本棚登録日 : 2019年1月13日
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