新訂 新古今和歌集 (岩波文庫 黄 101-1)

著者 :
  • 岩波書店 (1959年2月25日発売)
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感想 : 7
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古今・千載を経てこの和歌集をみてみると、歌の選び方ひとつでかうも色合ひが変るのかと思つてしまふ。
この新古今では、より一層ものの形といふものがことばと結びつき、謳はれる。それは時間から生じる移ろひの強烈な感覚。生まれたからには死んでしまふ。けれども陽は上り沈んでいく。春が来れば花が咲き、そして冬には眠り、また覚める。
終わりといふもの、無といふものに気づき始め、自分といふ存在に敏感になり始めてきたのがこの新古今集を読んだ時に感じたものだ。「無い」といふことの不可思議さぶつかり始めたといふか、わからないから考へないやうに閉じ込めたのか。ものに経れ、時に寄り添ひ、他人に出会ひ、自分といふものが存在するという事実に帰る。その時目に映つてしまふのは冷たい雨や冴えるやふな月、容赦なくこの身をさらふ風。さういふ感覚をことばに残さうとし、ことばを語り継がうとする精神があるからこそ、いまだに古典が遠ざからず居てくれる。それはやはり、この三十一文字の形式が感覚として根附いてゐるからに他ならない。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 詩集・句集・書簡集・対話集・エッセイ
感想投稿日 : 2017年11月14日
読了日 : 2017年11月14日
本棚登録日 : 2017年11月14日

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