こうやってまた手に取ってしまう、そんな一冊。
読み終わるたびにいつもすっと何かが洗われて、再び何かで満たされるような、このひとからはいつもそんなものを感じる。
どこかへ消えてしまいたい。どこまでも歩いていこうと、このどうしようもない自分からは離れられない。何ひとつ思うままに生きることさえできず、飼いならせない衝動を抱えて。
そうまでしてなんで生きているんだろうか。何も持たずに生まれてきたはずなのに、なぜそのまま終わりを迎えることができないのか。
そんな無力感。絶望といったひともいる。ならば、死んでしまえばいいのか。死んでしまえば生きなくてすむ。だが、それさえもできない。そんなことさえ考えられないくらい、なにもかもがどうでもいいのだ。死んだら終わりだなんて、どう考えても詐欺だ。
そうやって迷いながら歩いてる途中で、時に「僕」ということばにすがったり、誰かに「保険」をかけてそうやって生きていくんでしょう。
先なんて見通せるはずない。それが当然である。じゃあいっそすべてを今に委ねて今だけを生きればいいのか。そうではない。そんなこと不可能であるし、何よりこの「自分」が許さない。
この「自分」こそが、なんのことはないずっとここにいたのだ。そのことを知ったとき、力が満たされる。とりあえず一歩、踏み出す力が湧いてくる。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
物語
- 感想投稿日 : 2012年8月28日
- 読了日 : 2016年10月10日
- 本棚登録日 : 2016年10月10日
みんなの感想をみる