日本の学会や識者にあってほぼ常識となっている柿本人麿論、それは斎藤茂吉や遡って契沖そして賀茂真淵等によって形作られてきたものであるが、その柿本人麿理解を根底から転換させる大歴史書である。学問における日本古代への常識、その強い魔力に抗い鮮やかにかつ大胆に新説を生み出す思考のスケールや深さが読む者を引き込み強烈な快感をもたらす。文献渉猟のボリュームや分析の緻密さも納得性を増し興味を倍化させる。
「真淵は古代社会における激烈な権力闘争とそれに対する古代貴族の用心深い態度とを、ほとんど理解していない。--- 万葉集にせよ、古今集にせよ、それぞれひそかな政治的配慮をその背景に持っている歌集である」も印象的なフレーズである。
「下」に続く
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- 感想投稿日 : 2022年4月21日
- 読了日 : 2022年4月21日
- 本棚登録日 : 2022年4月21日
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