和泉式部日記 (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス)

制作 : 川村裕子 
  • KADOKAWA/角川学芸出版 (2007年8月31日発売)
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感想 : 31

【概略】
 栄華を誇った藤原道長に「うかれ女」と言われ、それに対し「あんたに言われる筋合いはないよ」を「歌」で返す胆力、センスにあふれる歌仙・和泉式部、その和泉式部の恋のうつろいを垣間見ることができる。

2023年01月01日 読了
【書評】
 そりゃ教科書に採用されにくいよな・・・ってのが読了後の第一印象。そして、「あぁ、千年の違いがあっても、同じなんだ。人は基本的に、変わらないんだ」という安心が次に。
 本書では、恋人であった為尊親王(ためたかしんのう)が亡くなって途方にくれている和泉式部と、為尊親王の弟である敦道親王(あつみちしんのう)との新しい恋のやりとりが取り上げられているのね。もちろん当時は LINE もないしメールもない。手紙でのやりとりになって。もちろん郵便制度も完成してない。小舎人童(こどねりわらわ)がメッセンジャーになって二人の橋渡しをするというね。ツールはどうあれ、コミュニケーションは変わらない。
 親王っていうのは天皇の息子、それに対して和泉式部は、出自という意味では低い身分にいる訳よ。でも、和泉式部にはなにかそこはかとない魅力があったのだろうねぇ。そんな魅力の一つがコミュニケーションスキルだったのじゃないかなと思う。位の高い人がキュンとなるような歌、そしてその歌の背景にある過去の歌への造詣、そういったものが和泉式部の言葉には垣間見えるのだよね。こうやって返すのか、なんて思いながら読み進めてしまった。
 これは根拠もないし、まだ調べてもいない、勝手な憶測だけど・・・「I love you」を「月が綺麗ですね」にでもしたらどうだと言った夏目漱石は、当時の「月」の重要性をわかってて選んだのかなと思った。基本、逢瀬は夕暮れに手紙のやりとりがなされ、その後、夜に行われる。だから月に関する歌、恋愛に関しての歌に多いような気がする。一緒に見る月、離れていても同じ月を見てる等々、太陽ではなく様々な表情をみせる月だからこそ、I love you を表現するのに月だったのかなとね。
 この和泉式部日記、牛車の中での「逢瀬」なんてのもあったりする。現代の車ね。火がついた二人には、もう場所なんてどうでもいいのは、今も昔も変わらないのね。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 古典
感想投稿日 : 2023年1月2日
読了日 : 2023年1月1日
本棚登録日 : 2023年1月2日

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