「最後の不可能トリック『読者が犯人』を可能とするアイディアを買わないか?」ある日、作者は見知らぬ男から、手紙で取引を持ちかけられる。初めは半信半疑の作者も、興味を抑えきれなくなり、やがて、物語は意外な結末を迎える。
エドガー・アラン・ポーが世界初の推理小説を書いて、早180年。世界中で数多くの推理小説が書かれ、意外な犯人を演出するのも難しくなってきました。それだけに、『読者が犯人』という触れ込みには期待していたのですが、何だか不完全燃焼で終わってしまいました。
トリック自体は悪くないと思うのですが、飛び道具的な方法なので、序盤の本格ミステリに関する記述が脚を引っ張っていると感じました。初めから、「今までのミステリーのタブーに触れる」「ミステリーへの問題提起」等の書き方をしてくれていれば、最後にモヤモヤは残らなかったと思います。
ただ、話の展開に不要だと感じた描写が、物語の核心をついており、トリックの荒い部分を上手くフォローしているなと感じました。
また、途中に挟まれている私小説は、繊細で、どこかノスタルジーを感じさせるもので、好感を覚えました。
それに、中盤で明かされた秘密には、物語に出てきた警察と一緒になって、驚かされました。むしろ、こちらの仕掛けをメインに何か書けたら面白いのではと思いました。
私はミステリーのトリックについて(面倒な)こだわりがあるので、とにかく面白い話が読みたい!新しい発想に触れたい!という人にはオススメな本です。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2021年10月18日
- 読了日 : 2021年10月18日
- 本棚登録日 : 2021年5月22日
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