プライベートバンクは、富裕層に何を教えているのか?――その投資法と思想の本質

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  • ダイヤモンド社 (2017年9月14日発売)
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【感想】
プライベートバンクへの憧れが強いために読破。
おそらく、自分の人生において自身がプライベートバンクで仕事をすることもないだろうし、また顧客になる事もないだろう・・・
そういった寂しい思いと羨望を抱えながら読んだ。笑

「プライベートバンク」とは、最低ライン1億円の富裕層のみをターゲットとしたプレミアムなシステム。
文中にある通り、「セールスマン」や「マネージャー」という所謂「提案営業職」ではなく、「顧客に対してのCFO」という立ち位置。
財務責任者とも書いてあるが、個人的には「執事」という言葉がしっくりきたかも。
収益の軸が金融商品の売買に対しする手数料ではなく、顧客の残資産に対しての管理料という「一蓮托生スタイル」も、プライベートバンクの強みなのかもしれない。
また、この本には書いていなかったが、本家のプライベートバンクで勤務するような人々は、金融パーソンとして経験やスキルを積み重ねた強者で、かつその中でも一握りのベテランばかりだという。
資産家もスゴイが、プライベートバンクで勤務できるレベルの「人財」に憧れた。

とまぁこのように読んでみて、「自分のようなイチ庶民が今後プライベートバンクにお世話になれる可能性は限りなく少ないだろう」と変に納得をした。
「ではプライベートバンクの顧客になるという途方のない夢を一旦諦め、プライベートバンクが富裕層に提供するプランを学び、模倣しましょう!」といった本書のテーマなのだが、それを素人に実践させようというのは、些か無理が過ぎるのでは?と思った。(元も子もないが・・・)
そのくらいメソッドが突飛すぎて、普段から投資を生業としていない限り、イチ素人には参考にならない話も多かった。

この本に限らないが、、、
プライベートバンクという偶像に憧れつつ、ちょっとした金融小説を楽しむような気持ちで読むべき本だなーと思いました。



【内容まとめ】
0.富裕層の資産管理だけを行う専業銀行を「プライベートバンク」、
銀行・証券・信託・保険などの金融機関がその一部門としてプライベートバンク業務を行なっているケースを「プライベートバンキング」と呼んで区別する

1.プライベートバンク各社が積極的に営業攻勢をかけ始める最低ラインは1億円(100万ドル)。

2.プライベートバンクの目的は、顧客の資産状況や要望に応じて「包括的な資産運用の提案と実行を担うこと」。
数億円、場合によっては数千億円単位で預かり、中長期的な視野に立ってその運用方法をプライベートバンクが検討し、提案し、実行していく。

3.高すぎる相続税
世界1位の相続税率。。。
2003年の税制改正までは最大70%もあり、改正後は50%まで引き下げられたが、2015年から55%まで引き上げられた。
相続税がない国は、イタリア、カナダ、オーストラリア、スウェーデン、中国、タイ、マレーシアと多数ある。
世界的に見ても日本はどこまでも富裕層に厳しい国である。

4.プライベートバンクは「一族のCFO」財務責任者。
身内であれば、財務だけでなく経営判断で悩んだ時のよき相談相手となるため、外部の税理士に依頼するよりもメリットがある。
プライベートバンクのあり方も同じ。
顧客の目標が実現するように、時に参謀として、秘書として、メンターとして、そして友人として顧客とその家族に寄り添う。

5.ゴールベース資産管理
「◯歳までに△を実現する」といった形で、フェーズごとに中間ゴールを設定し、そのゴールごとに資産運用を決定する。
人生において何かを本気で成し遂げたいのであれば、不確実な時代であっても面倒がらずに中長期の人生計画を立て、愚直にPDCAを回していくしかない!

「このままいくとどうなるのか」ではなく、「自分は将来どうありたいか、そのためにいつまでにいくら必要なのか」という理想像といくらのお金が必要なのかを試算する。
そしてそのお金を得るために今何をすべきなのかを逆算しながら計画を練る。

6.PL
「売上」「費用」「利益」の3項目。家計簿では、「収入」「支出」「貯蓄」
キャッシュフローの全体像を把握し、改善点を見つけること。
「収入を増やすための課題」と「支出を減らための課題」をリストアップしていく。

7.「ハーバード流ポートフォリオ」
株式…25%
債券…25%
オルタナティブ投資(金融資産)…25%
オルタナティブ投資(現物資産)…25%


【引用】
・日本人は1億円の壁で分けられる
プライベートバンクとは自社の審査を通った富裕層だけにサービスを提供する金融機関の精鋭部隊のことで、海外にはプライベートバンクを専業で行なっている会社もあります。
野村證券は国内の金融機関としては最大規模のプライベートバンク部門を有しており、「京都ホテルオークラ」にVIP専用のオフィスを構えています。

各社が積極的に営業攻勢をかけ始める最低ラインは1億円(100万ドル)です。


・精鋭部隊による資産管理と運用
プライベートバンクの目的は、顧客の資産状況や要望に応じて「包括的な資産運用の提案と実行を担うこと。」
数億円、場合によっては数千億円単位で預かり、中長期的な視野に立ってその運用方法をプライベートバンクが検討し、提案し、実行していきます。


・明確に存在する「1億円の壁」
京都オークラのVIPルームのように、特権的な世界はカモフラージュされているだけで存在していないわけではありません。
特に金融業界における「1億円の壁」は純然と存在し、そこを突破するかしないかで扱いが変わり、見える世界も変わります。


・本書の4つの目的
1.「1億円の壁」の向こう側にいる富裕層の実態をつまびらかにすること。
2.プライベートバンクについて正しい理解をすること。富裕層とプライベートバンクがどうやって接点を持つのか?
3.プライベートバンクが顧客に対し、金融リテラシー教育の一環としてアドバイスをする、「資産運用10原則」
4.プライベートバンクが富裕層に提供するものと実質的に同じ価値を持つ方法があることを理解すること。


p23
・高すぎる相続税
世界1位の相続税率。。。
2003年の税制改正までは最大70%もあり、改正後は50%まで引き下げられたが、2015年から55%まで引き上げられた。
相続税がない国は、イタリア、カナダ、オーストラリア、スウェーデン、中国、タイ、マレーシアと多数ある。

世界的に見ても日本はどこまでも富裕層に厳しい国である。


p31
・病院オーナーの共通の悩みとは?
医療法人ならではの高い相続税。
一般の会社の事業承継ですら難しいのに、病院の承継はさらに難しい。
そのため、開業医の多くはメディカルサービス法人(MS法人)という別会社を持っている。

後継者や親族をMS法人で雇うことで、給与・配当・役員報酬といった様々な形で金融資産を家族に生前贈与的に分散させる事もできる!


p36
・資産運用の基本
原資が多ければ多いほど、お金を生み出すことは簡単になる。
資産1000万円の人が資産運用で1億円に増やすのは至難の業。奇跡的に年利10%の利回りをずっと続けても25年かかる。
しかし、すでに10億円持っている人が資産運用で1億円を生み出すのはそう難しくはない。


p44
・プライベートバンクは「一族のCFO」
プライベートバンクは財務責任者です。
身内であれば、財務だけでなく経営判断で悩んだ時のよき相談相手となるため、外部の税理士に依頼するよりもメリットがある。

プライベートバンクのあり方も同じ。
顧客の目標が実現するように、時に参謀として、秘書として、メンターとして、そして友人として顧客とその家族に寄り添う。


p55
富裕層の資産管理だけを行う専業銀行を「プライベートバンク」、銀行・証券・信託・保険などの金融機関がその一部門としてプライベートバンク業務を行なっているケースを「プライベートバンキング」と呼んで区別するケースもある。


p105
・資産運用の10原則
1.ゴールを明確にし、逆算する「ゴールベース資産管理」を。

2.バランスシートで家族の資産を可視化する。

3.円建ての預貯金のみに頼らない。

4.世界経済の大きな流れに逆らわない。

5.マーケットに依存しない分散型ポートフォリオを組む。

6.ルールを知り、ギリギリまで攻める。

7.金融商品の目利き力をつける。

8.一発KOだけは絶対に避ける。

9.資産運用は中長期で考える。

10.次世代を見据えた資産運用をしていく。


p106
・ゴールベース資産管理
「◯歳までに△を実現する」といった形で、フェーズごとに中間ゴールを設定し、そのゴールごとに資産運用を決定する。
人生において何かを本気で成し遂げたいのであれば、不確実な時代であっても面倒がらずに中長期の人生計画を立て、愚直にPDCAを回していくしかない!


p127
・オルタナティブ投資
金融市場の動きとは別の動きをする。
上場株式や伝統的資産と呼ばれるもの以外の、新しい投資対象や投資手法のことをいう。
オルタナティブとは、「代わりの」「慣習にとらわれない」という意味。
具体的な投資対象として、農産物や鉱物、不動産、未公開株やデリバティブ(金融派生商品)、それを扱うヘッジファンドなど。

今の時代、株や債券以外の商品にも投資しないと安定運用は望めない!!
とにかく重要なことは、資産を一点集中させないこと、マーケットの動きに依存しすぎないこと!


p150
・ロングショート戦略
世界のヘッジファンド運用資産の36%がこの戦略で運用されている。
運用資産が100億円の場合、50億円分は値上がりしそうなものを買う(ロングする)ことに使い、残りの50億円は値下がりしそうなものを空売り(ショートする)するというもの。
ロングとショートを併用する事で、マーケットが上昇しようと下落しようと利益が出せるようにしている。


p151
・マネージドフューチャーズ戦略
フューチャーズとは「先物」の意味。
「上がったので下がるだろう」という「逆張り」の投資法ではなく、「上がったのでもっと上がるだろう」という「順張り」で先物取引を行なう。


p157
・IPO株
企業が上場するときに配分される株。
上場日に初値がついた瞬間に価値が数倍に跳ね上がることもある。
時に価格割れを起こすこともあるが、滅多にないくらい勝てる可能性が高い。


p168
・オフショア生命保険
レバレッジをかけた巨額の死亡保険金を設定できること。最大100億円程度の死亡保険金まで加入できる。


p175
・ゴールベース資産管理
「このままいくとどうなるのか」ではなく、「自分は将来どうありたいか、そのためにいつまでにいくら必要なのか」という理想像といくらのお金が必要なのかを試算する。
そしてそのお金を得るために今何をすべきなのかを逆算しながら計画を練る。


p176
・PL
「売上」「費用」「利益」の3項目。
家計簿では、「収入」「支出」「貯蓄」

キャッシュフローの全体像を把握し、改善点を見つけること。
「収入を増やすための課題」と「支出を減らための課題」をリストアップしていく。


p179
・BS
「総資産=負債+純資産」
自身の資産を透明化し、借入が多過ぎないか、眠っている資産が多過ぎないかを確認する。


p187
・「ハーバード流ポートフォリオ」をベースにアレンジする。
株式…25%
債券…25%
オルタナティブ投資(金融資産)…25%
オルタナティブ投資(現物資産)…25%


p190
・ドルコスト平均法で時間も分散投資する。
定期的に一定額を積み立てていく手法。


p194
・富裕層は何事もリターンとコストで考える。
富裕層は、元来投資発想を身につけている人が多い。
お金の使い道を「投資・消費・浪費」で考えている。
また時間についてもリターンとコストで考えている。

時間はお金と違ってストックできないから尚更である。
非生産的な1日を送ると、その投資機会は二度と帰ってこない。
この発想を当たり前の感覚にできれば、日々の判断基準や行動基準は大きく変わってくる。
自分の時間を最大化する最もシンプルな方法は、できるだけ自分の手を煩わせないような「仕組み」を考えること!

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: マネー
感想投稿日 : 2019年4月10日
読了日 : 2019年4月10日
本棚登録日 : 2019年4月10日

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