脳神経科学の分野は、fMRIにより、脳の中で今何が起きているのか?はかなり細部まで理解できるようになった。
一方で哲学は、『心とは何か、意識とは何か、認知とはどのような機序で生じるのか』の部分に、言葉遊び以上の論議をしていない印象がある。(私には、ですけどね)
本書の著者、ゲオルク・ノルトフは、両者をきちんとした知見でつなぎ合わせ、かつ一般読者にも理解できる話法で丁寧に説明してくれている。
よくある症例を起点にして、脳では何が起きているか。
「意識が戻らない」と非医療者がざっくり言ってしまう状態を、脳神経科学はどのように説明づけているのか。
何より『ここまでは説明可能な仮説があるが、ここから先はまだ検証されていない』と正直に書いてある。扇情的なエセ科学本が蔓延する昨今、この一点をもって良書とするのは言いすぎかも知れない。
だが、先に挙げた解りやすさをもって良書とするのに、異議は少なかろう。
訳文がかなり原文よりなので、長文分割してくれたほうがいいのに、と感じる部分もあるが、『全く歯が立たない』ほどではなかったので星は減らさないことにした。
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- 感想投稿日 : 2019年3月20日
- 読了日 : 2019年3月20日
- 本棚登録日 : 2019年1月30日
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