若衆歌舞伎役者の世界を中心に逸話を集めた、井原西鶴の『男色大鑑(なんしょくおおかがみ)』。
タイトルから引く向きもあろうが、本作は所謂「こういうカップルや人気の美少年がおりまして、かくかくの所以があった、逸話があった」という逸話集である。
短編かれこれ40篇ほどなので、一話ずつ読むもよし。各話の冒頭に、あらすじ解説があるので、西鶴翁のノリが分からない現代の初見読者にも、とっつきやすい優しい設計。
ただし、恋のもどかしさや胸を焦がすようなドキドキ、性愛描写を期待する向きは、現代のBL小説をお読みになるほうがよい。
つまり『そういうの』は載ってないのである。
もう一方の《武士編》は武家社会の話中心なので、必定『契り』の大切さ、それに準じる意気地といったものが前面に出てくる。
本作は逆に、町民の世界。若衆/若女形にスポットがあたっているせいか、単なるカップル逸話集ではなく、役者の生きざま、衆道とはどうあるべきか、といった話もある。
現代人になじみのない風俗、髪型や道具などが図解入りでわかりやすいので、若衆遊びとはこのようなものであったのか、ふむふむ……と引き込まれてしまうであろう。
古典として読む井原西鶴、というより現代語に訳しなおされた井原西鶴で知る、男色の逸話集、ととらえたほうが良い。そういう意味では、文句なしの星5つである。
西鶴翁自身がしれっと作中に登場しているのも、茶目っ気があるというか。今の世の腐女子諸姉におかれてはむしろ、夢要素がこの時代から、と微笑まれるのではないだろうか。
こちらが気に入った方は、巻末に本邦の男色歴史解説も載っている、《武士編》も併せて読まれたい。
- 感想投稿日 : 2020年3月12日
- 読了日 : 2020年3月12日
- 本棚登録日 : 2019年11月28日
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