舞台は奈良時代。仏像彫り師の茜丸と、生きるため多くの人間を殺してきた片目片腕の我王、2人の男のお話。彼らはいわば「善」と「悪」で対比されるかの様に描かれていくのですが、我王は速魚(我王に救われたテントウムシの生まれ変わりの女性)の愛に触れ、僧正の輪廻転生の話に心を動かされ、仏像を彫ることで初めて他人から感謝される喜びを知り、変わっていく。
一方茜丸は鳳凰の像を完成させた後、後世に自らの名を残すことだけを考える様になります。我王との彫り物勝負で負けるも、我王の過去を引き合いに出し自分の勝利を手にする。
理不尽な理由で簡単に人が死んでいきます。また、この巻で初めて輪廻転生についてハッキリと言及されます。
「なんになるかはだれも決められん…ただいえることは前世でどんな生き方をしたのかの報いが来世にかかわるのじゃ」
茜丸は今後この世が終わるまで人間に生まれ変わることは無いと火の鳥に告げられます。一方我王は、苦しみ続ける業を背負いこれから何度も人間として転生し続ける…。これはどちらもキツいです。最終的に我王が善の心を持ったとしても、彼がこれまで人を殺してきた罪は消えない。火の鳥に我王は苦しみ続ける自分の子孫を見せられるのですが、その中には未来編の猿田博士も出てきます。
自分の人生は怒りで満ち溢れていたと振り返る我王に、火の鳥は
「お前だけでは無い。人間はすべていかりにつつまれた人生を送った」
「いかりをその苦しみを力いっぱいに訴えなさい!」と語りかけます。
理不尽なことばかり、怒りでいっぱいの人生の中で、その苦しみを生きる力に、何かを作り出す力のエネルギーにしろと読みとれました。
両手を失った我王は太陽の光を受け、世界の美しさに涙します。
読み終わって何とも言えない気持ちになりました。茜丸だって悪人ではなかった。
ブクログで発見したのですがファミコンゲームで「火の鳥~我王の冒険~」というソフトがあるらしく興味をそそられました…笑
- 感想投稿日 : 2013年1月11日
- 読了日 : 2013年1月10日
- 本棚登録日 : 2013年1月11日
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