異国の出来事 (ウィリアム・トレヴァー・コレクション)

  • 国書刊行会 (2016年2月29日発売)
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本棚登録 : 129
感想 : 10

 性別、年齢問わず様々な人々に焦点を当て、彼らの旅先での出来事を綴った12編。《異国》という環境がもたらす疎外感や解放感を根底にして、彼らと、その《異国》で出会った人々との微妙な距離感や、どことなく不安定に浮遊した関係を描きたかったのだろうか。どの編も物語的な盛り上がりや派手さはそれほどないが、落ち着いた丁寧な描写が染み入る。
 順番通りに読んでいて、ひたすら不倫(する側だったりされる側だったり)を題材にした話ばかりだったので興醒めしかけたが、それだけではないので中盤以降多少は読む側の気持ちも持ち直した。《異国》には距離だけでなく時間的な隔たりをも与える力があり、その舞台装置に翻弄される人々の心の移ろいを描くのにはうってつけのテーマなのは何となく理解できるが、もう少し違うタイプの物語を読んでみたかったように思う。
 12編の中では、旅先での思わぬトラブルに遭遇した器量の悪い夫婦の葛藤を描いた「三つどもえ」と、少女時代の思い出や淡い恋心から生じた疑心と悔恨が、数十年後の旅先での邂逅により蘇る「娘ふたり」が好き。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2017年8月4日
読了日 : 2017年8月4日
本棚登録日 : 2017年5月7日

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