羽ばたき Ein Marchen (ビームコミックス)

  • KADOKAWA (2020年7月10日発売)
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本棚登録 : 85
感想 : 7
5

鳩山郁子の本は8割がた読んでいる。
毎回ため息をつくほど好きなのに、どこか走り去りゆく作者の背にタッチできないような、隔靴搔痒を感じていた。
が、今回は確実に、少しだけ触れた。
もちろん読後、その感触だけ残していつものように作者は逃げていったのだが、触れた瞬間の喜びと、走り去られるに違いない喪失感の予感とが、同時に感じられたこの読書体験だけは、憶えておきたい。

内容についてはもう、わざわざ書かない。
何度でも読み返すだろうから。

原作小説の展開のあとに、18ページほど、鳩山郁子なりの解釈が描かれているのだが、
ここだけで萩尾望都「残酷な神が支配する」の達成に、届かんとしていると思う。
鳩山郁子も、誰かの背を追っているのではないか。
今回は確実に堀辰雄の背に触れた、いや堀辰雄を背後から抱き留めた、と感じているのではないだろうか。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 漫画
感想投稿日 : 2020年8月2日
読了日 : 2020年8月2日
本棚登録日 : 2020年7月31日

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