鳩山郁子の本は8割がた読んでいる。
毎回ため息をつくほど好きなのに、どこか走り去りゆく作者の背にタッチできないような、隔靴搔痒を感じていた。
が、今回は確実に、少しだけ触れた。
もちろん読後、その感触だけ残していつものように作者は逃げていったのだが、触れた瞬間の喜びと、走り去られるに違いない喪失感の予感とが、同時に感じられたこの読書体験だけは、憶えておきたい。
内容についてはもう、わざわざ書かない。
何度でも読み返すだろうから。
原作小説の展開のあとに、18ページほど、鳩山郁子なりの解釈が描かれているのだが、
ここだけで萩尾望都「残酷な神が支配する」の達成に、届かんとしていると思う。
鳩山郁子も、誰かの背を追っているのではないか。
今回は確実に堀辰雄の背に触れた、いや堀辰雄を背後から抱き留めた、と感じているのではないだろうか。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
漫画
- 感想投稿日 : 2020年8月2日
- 読了日 : 2020年8月2日
- 本棚登録日 : 2020年7月31日
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