夢みる惑星 (3) (小学館文庫)

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感想 : 4
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3/3

小学校高学年のころは集英社コバルト文庫、角川スニーカー文庫、富士見ファンタジア文庫のレーベル読者だった。
特に前田珠子が好きで、「破妖の剣」シリーズや「聖石の使徒」シリーズに入れ上げていたなぁ……と遠い眼をして、検索してみたら、
なんとゆかりのある佐賀の嬉野出身で、何度も行った鹿島高校卒業と知って、驚いた。
今は東京から嬉野に戻っているんだとか……遠い眼ゆえ、いきなり脱線した。

また脱線を敢えて続けるなら、中学の頃は「少年ガンガン」の「STAR GAZER〜星に願いを〜」で知った堤抄子の、過去作に遡って「聖戦記エルナサーガ」も好きになった。
「月刊Gファンタジー」という雑誌はド田舎では扱われていなかったので知らなかった上、新書版の漫画本しか知らなかった身としては、漫画なのに大判単行本(紙質もいい!)で高価だ(数百円)ということに、恐れ戦きながら買いそろえていったものだ。
インターネットなどなかった頃。
と、自分の備忘録も兼ねて書いたのは、ハイ・ファンタジーには疎いということを前置きしておきたいからだ。

この作者の名前を知ったのは、萩尾望都「一度きりの大泉の話」で。
萩尾、竹宮両人のアシスタントを経てデビューした、ポスト24年組と呼ばれる世代なんだとか。
大泉本141ページで、
「佐藤史生さん、池田いくみさんは(略)実入りのいいバイトだというので、石綿の服の縫製する仕事を見つけ、働いていましたが、ある日いくみさんが体調を崩し(略)脳血栓だった」。
または、佐藤史生が城章子に「ケーコタンがモーサマに嫉妬して大泉を解散させたんだ、ケーコタンに同調してモーサマを苦しめるんじゃない」と注意した、といった記述。
つまりは冷戦状態のどちらにも出入りしていた人で、「大泉解散は、佐藤史生と城章子のせい」という噂もあったらしく……。
竹宮派・萩尾派といった見方も無益だろうけれど、おそらくやや竹宮派と思われる来歴の作者なのだが、
……これが作品を読んでみたら、キャラクターが弾け・飛んで・跳ね回っていくかのような竹宮的作風よりは、ファンタジーとSFを架橋するような理知的な作風(そして白っぽい空間認識)という点で、やや萩尾寄りなんじゃないかなと感じた。
そして世界の諸相が明らかになる、ラストもラストの印象は、堤抄子「エルナサーガ」の「ギムレー→世界」という視界が晴れるようなインパクトと同質で……。

もはや読者の個人史から勝手に想像しているに過ぎないが、堤抄子←前田珠子←佐藤史生←竹宮・萩尾←手塚やら同年代の作家やらトールキンやら……と。

漫画自体の感想を離れてしまったが、つわものどもが夢の跡と思えば、一作をあれこれ言うのも虚しい。
2010年没、と坂田靖子がホームーページで告知。57歳没。
往時の関係者がポツポツ亡くなる中で、自ら証言者になり得ない人の、証言や流言やが各方面から漏れ聞こえ、本当なんだか、修正されるのを待っているんだか。
作品だけが真実なのだが、それだけではいられない潮流に作品すら巻き込まれる人々……。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 漫画
感想投稿日 : 2021年12月14日
読了日 : 2021年12月14日
本棚登録日 : 2021年11月10日

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