風の谷のナウシカ [DVD]

監督 : 宮崎駿 
出演 : 島本須美  納谷悟郎  松田洋治  高畑勲  久石譲  辻村真人  京田尚子 
  • ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント
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感想 : 506
5

コロナ禍で連想したのが、カミュ「ペスト」、トーマス・マンというかルキノ・ヴィスコンティの「ヴェニスに死す」、ヴェルナー・ヘルツォーク「ノスフェラトゥ」、ジョージ・A・ロメロ「ゾンビ」、そしてこの「ナウシカ」だったのだ。
せっかくなので、以前手放してしまった漫画を再読した。
岡田斗司夫や町山智浩やの音声でさんざん予習した。
今後、赤坂憲雄「ナウシカ考」も読むつもり。
そして宮崎駿のフィルモグラフィー全体を見直してみるつもり。
という一環で、おそらく5,6回目の鑑賞をしたわけだが、やはり言うまでもない素晴らしさ。
まとめきれないので箇条書きにする。

・あえてヒコーキとは言わず船と呼ぶ。同じく、大地を海に見立て、あえて風を波と表現する感覚。鳥という比喩も。ここで海と大地と空が重なってダブらされて、美しい語感が作品全体を覆う。この言語表現もすさまじいんだな。
・ガンシップってほとんど大砲。面白い乗り物だ。やはり乗り物の鋲は必須なんだな。
・音楽がいい。時代を感じさせる電子音から、オーケストラの音楽へと。緩急が凄い。音楽と無音。いきなり無音になったことで無風を伝える、とか。
・ナウシカのかすれ声・おらび声。島本須美大好きだ。
・自然の摂理をわかっていない者としてクシャナを描く、勇気。漫画を読むだにおそらく思い入れあるキャラクターだろうに、映画では愚かさの側面を大きく出して、あえて捨て駒として使う。これはやはり思い切りがいいというにとどまらない勇気だ。
・救世主はユパなのかも、というミスリードが序盤に。これは忘れていた。
・かなり台詞で説明している。このあたり「もののけ姫」のわかりづらさに繋がるのだろう。
・宙に浮かぶモノの影とか。
・愛ずる蟲を取り上げる父の影。→漫画版では母親の横顔(愛してくれなかった)が描かれるが、映画でも親子関係を精神分析的に読み解きたくなるポイントがあるんだな。
・クロトワ、やはりいい役どころだ。ともすれば悪しき宗教に傾くかもしれないところへ、この人がいるだけでいい歯止めになる。「エヴァ」の加治リョウジに似ている。
・ナウシカの顔について。漫画やイラストで記憶が上書きされているが、意外と古臭い、というか名作劇場っぽい。というか一番印象塗り替えに買っているのは、髪形なのだと気づいた。この子の髪形は、現実の女性にも普通に転用可能なのに、アニメならではの表現……風でなびいたり、怒りで逆立ったり……になっている。この印象が強い。
・この舞台を世界というには、あまりに狭い……トルコ周辺とネットでは言われているが。漫画では土鬼も関わるので地図と重ね合わせる意味もあるが、映画だともっと限定されているので、むしろ地形図や略図で足りそう。舞台は風の谷と酸の海と宇宙船周辺に限定されているのだ。ここも今回見て改めて知ったこと。
・連想したのは、堤抄子「聖戦記エルナサーガ」のギムレー。魔獣の息で人の住める場所が限定されている、というファンタジーで、おそらくナウシカに影響されているのだが。この漫画では世界のことをギムレーと呼ぶ。そして住める土地が広がった暁には、いやこの世界をギムレーと呼ぶのはもうやめよう、といった記述がある。
・溜めがほとんどなく、巨神兵が撃つ。同じく、ほとんど溜めなく、ナウシカが王蟲に蹴散らされる、それも無音で。これぞ演出。
・確かに奇蹟だ、高畑勲が批判したように。悪い意味での宗教ものになってしまった、と。皆がラストに集って(FF4のように)、あー伝説と同じでよかったねー。みんな持ち場に帰っていって大団円。え、それで!? という。
・こんなにすさまじい作品に反省点を見い出して、その悔しさを原動力に諸作や漫画を作り上げる、この永久機関のごとき内燃機関よ。
・このDVDには原画担当の庵野秀明と演出助手の片山一良のコメンタリーが入っている。これも無類に面白い。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: アニメ
感想投稿日 : 2020年6月3日
読了日 : 2020年6月3日
本棚登録日 : 2020年6月3日

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