おもひでぽろぽろ [DVD]

監督 : 高畑勲 
出演 : 今井美樹  柳葉敏郎 
  • ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント (2012年9月12日発売)
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本棚登録 : 1689
感想 : 217
4

過去20年の履歴にないので、たぶん1992年か1994年のテレビ放映で数回見たきりなのだろう。
が、1983年生まれの私が9歳だか11歳だかで鑑賞し、小学生の記憶に、ひどく食い込んでいた、と今回気づいた。
挿話としては、割り算に素直に乗れない、とか、パイナップルが新しかった、とか。
パイナップルを食べすぎて口の周りが腫れてしまった、とか、同級生のSくんが割り算を納得しないままできる人はどうかしていると話していた、とか、記憶において本作以上に上乗せされているのだ。

小学生時代は1966年。それを回想する現代は1982年。漫画が1987年。映画が1991年。私が見たのが1992年だか1994年だか。ちなみに「ちびまる子ちゃん」は1974年。
こうして整理したが、むしろ1960年生まれの母のほうが、同時代を感じていたはず。
そういえばパイナップルで口が腫れたという経験は、一緒に本作を見ていた母が言っていたことだったのか……?

と、自分のおもひでがぽろぽろしているわけだが、1982年現在の時制に、どうしても、どーしても! 乗れなかった。
横で見ていた妻が、田舎っていいよねーというタエ子の言いざまに怒り心頭、嫁に来ないかというババアにも怒り心頭、むしろ妻のほうが楽しんでいた。
単純に、露骨に頬骨を見せるキャラデザに乗れなかったり、田舎の人々の笑顔が怖かったり気持ち悪かったり、ギバちゃんの過剰さがアニメにそのまま現れているのでうんざりしたり(プレスコの弊害!)、ということかと思っていたし、勲結局新日本風土記みたいな番組作りたかっただけちゃうんと考えたり、ニコニコ動画かyoutubeで過去パートだけ切り取った動画を上げてくれたらいいのになー(少女タエ子を演じた本名陽子は、本作→耳をすませば)と考えたりもしていたが、その感情移入のしづらさ自体が、勲の掌の上だったのだ。

映画を見る前に漫画を読んでみて、その現代っぽさに感動していた。(さくらももこ→本作の漫画→高野文子)
だからそのまま映像化してくれればよかったのに、と。
が、現代パートを入れることで、「火垂るの墓」と同じく作品は多層的になる。
私のように違和感を持つ人も出るし、単純におもひでにぽろぽろ泣かされる人も出るし。
私の違和感は、農業体験という自分探しの旅という浅はかさ、という皮肉な視点以前に、ただただ、ここまでひとつの時点にこだわって記憶を反芻する成人女性が、気持ち悪い、というもの。
まるで心を病んでいて、結果的には子供時代の思い出しか、自分を受け入れてくれない、というか。
精神分析を施す相手がいないから、過去への旅に出ざるを得なかった、というか。
え、高校で演劇部に入ったとか言ってたけど、中学高校は思い出せないってことは、何か一家離散とか死とか夜逃げとかあったのか、とか。
そんな裏読みをしてしまう、謎解き好きな、ひねくれた人に、ぜひ見てほしい分析がある。
他人の褌を取って言うのもなんだが、これが決定版の評論だと思う。

鬼才高畑勲『おもひでぽろぽろ』のすべて
https://note.com/kakan/m/m5ab6def30df2

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: アニメ
感想投稿日 : 2020年8月19日
読了日 : 2020年8月19日
本棚登録日 : 2020年8月19日

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