新装版 推定無罪 (上) (文春文庫) (文春文庫 ト 1-11)

  • 文藝春秋 (2012年9月4日発売)
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感想 : 24
4

時折、海外ミステリーを読みます。
そんなに詳しくないので、適当に有名なものを。
という訳で、スコット・トゥローさんという人の書いた「推定無罪」。まずは上巻。

元検事補で弁護士さんなんですね。作者が。そりゃ法廷については詳しいはずです。
「法廷もの」の不滅の名作だそうです。1987年にアメリカで出た小説。

地方の州が舞台みたいで、そこの検事補さんが主人公。一人称小説です。
どうやらアメリカのそういう職業では、検事補とか検事とかっていうのは、政治家の類なんですね。
選挙とかでボスが選ばれる。
でも同時に、警察を指揮して、捜査にあたって、法廷で活躍します。
主人公のラスティーさんは40代な感じ。男性。既婚。男の子が1人います。
で、ボスが選挙で負けそうだ。
というちょっと不安な時期に、同僚/後輩のセクシーな30代(40代?)女性と不倫の情事に溺れちゃう。
この女性がセクシーで野心家の設定。ちなみに独身。

なんだけど、捨てられる。捨てられた挙句に、女は自分のボスとできちゃった。
で、このラスティーさんが、真面目に生きてきたエリートで、情事に溺れちゃって、忘れられない。
もだえ苦しむ。妻にもバレる。えらいこっちゃな日々の中で。

なんと、そのセクシー女性が、殺されちゃう。殺人事件。

捜査にあたります。
犯人が判りません。

そして選挙。
ボスが負ける。
下野する形になる上に。なんと。

現場のグラスに自分の指紋があって、「犯人」として起訴されてしまうんですね。

オセロがひっくり返るように、人生が暗転します。

という、なかなか出来過ぎのミステリー展開なんですが。
なかなかどうして、筆の具合は堂々と焦らず。
業界モノとしての読みごたえが十分な上に、作者のやりたいことは、どこまでも中年エリート男性の心理なんですね。
微妙な妻との距離感、子供への愛情。脱線して溺れていく自分を制御できない惨めさ。
利害損得、組織の都合に翻弄されるストレス。

うーん。

海外ミステリー版、横山秀夫さんって言いますか(笑)。

基本、「男の子小説」だとは思いますが、なかなか腰が据わっています。下巻が楽しみになってきました。


(なんだけど…実はこれ、映画になっています。
ハリソン・フォードさん主演。
で、この映画、観てしまってるんです。
面白かったんです。ハリソン・フォードさんの映画では、最高傑作の部類じゃないかなあ、というくらい。
監督はアラン・J・パクラさん。「大統領の陰謀」(1976)とか撮った人ですね。
「推定無罪」は1990年の映画。法廷もの映画としても、「評決」とかと並んで秀逸。

…で、この映画…

ラストが怖いんですよ。すごかったんですね。

原作通りなんだろうな…というコトで言うと。
原作から読めばよかったかな、とチョット後悔…。

でも、面白い映画/小説は、筋を知っていても面白いはずだ…と、思いながら…)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 電子書籍
感想投稿日 : 2014年11月28日
読了日 : 2014年11月28日
本棚登録日 : 2014年11月28日

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