あまりにも衝撃だったので思わず長文感想。
この作品、度々タイトルを目にする機会があり、ずっと気になっていました。BLだけでなく近親相姦やレイプなど様々なタブー要素を含んでいる作品でもあるので、読んでいいか迷う作品でもありました。
まあでも昔のマンガだし皆が言うまでのタブーも今ほどではないだろうと思って読んだ。そんなことはなかった。
途中までは、ベッドシーンの多さや禁断の関係に、背徳感を感じずにいられませんでした。
しかし主人公のジルベールとセルジュの二人がどうなるか、気になって途中で切ることは出来ずに淡々と読み進めました。残すところ4分の1ぐらいでしょうか。徐々に辛くなり始め、でも止まらずいっきにラストを駆け抜けた。ラストを読んだ直後はもう放心というか、ぼんやりとしていました。翌日、急にジルベールが楽譜を買うコマが浮かび、彼や登場人物達の心情変化を追い始めるともう切なくてなんて苦しい物語だったんだ……とその日もう作品のことで頭がいっぱいでした。
この物語は大衆の感動を誘うためだけにタブー要素を使っていない。むしろ大衆の感動誘う要素として扱っているならあまりにも乱暴、もうこれ以上悲劇に遭わせないでくれと言いたくなるくらい……。
「風と木の詩」は悲劇だけで感動を媚びていないと思うのです。
悲劇から幾重もの感情が生まれ、反芻し、感情からその物事が起こる。都合の良い悲劇など一度も起こってない。すべて過去から繋がっていったものでした。その繋がりを追って、読んだ読者は涙するのだと思う。
なぜジルベールがこういう性格なのか、どうしてそんな行動をするの?
そういった人物像が読めば読むほどに紐解かれてゆき、クライマックスの前では最初とは違う想いを主人公の二人が寄せ合っていると実感したあたりから読むのが辛くなる。
不透明で穢らわしい禁断だらけの要素を用いてここまで純粋な愛が描けるのはこの作品以外出たんでしょうか?
男女の恋愛だけが純粋な愛なのか、気持ちを伝える方法は言葉だけなのか、もういろんなこと考えてしまいました。
もう一度読んだら、泣く。
- 感想投稿日 : 2014年2月3日
- 本棚登録日 : 2014年2月2日
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