弟を殺した彼と、僕。

著者 :
  • ポプラ社 (2004年8月1日発売)
4.05
  • (25)
  • (16)
  • (17)
  • (1)
  • (1)
本棚登録 : 144
感想 : 31
5

死刑賛成の人も,反対の人も,死刑存置論の人も死刑廃止論の人も,死刑のことよく知らない人も,死刑のことなんて考えたことがない人にも,是非とも読んで欲しい一冊です。

「被害者遺族の気持ちを考えたことがあるのか」と言いますが,彼らもまた考えたことはないのです。一方的に,「被害者遺族は,怒りに凝り固まって,死刑を望んでいる」と決めつけているのだと思います。僕は,彼に「被害者遺族の気持ちに同情するので,死刑に賛成する」と言ってもらうより,被害者遺族の肉声に直接耳を傾け,受け止める時間を少しでも持って欲しい,と思いました。単に「被害者遺族の気持ちを考えて死刑に賛成する」という声に,僕は寂しさや怖さを感じます。そのような人は,僕のような者を,「家族を殺された彼らは、平穏に暮らす自分より気の毒でかわいそうな人」と一段下に見ていると感じます。「言われなくても被害者遺族の気持ちを推し量ることができる自分は,人間らしい情のある者だ」と,心のどこかで考えている気がします。被害者のことなど真剣に考えてはいないのです。(195,196ページ)

これが全てを物語っている気がします。死刑存廃を語るに,ここのところは一番忘れてはいけないところではないでしょうか。人が100人いれば100人が皆違う考えなのです,被害者もその一人です,被害者が皆同じ考えであるはずがない,そこをしっかりと念頭に置いた上で,これから先も死刑を考えていきたいと思います。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 漫画以外
感想投稿日 : 2012年4月8日
読了日 : 2012年4月8日
本棚登録日 : 2012年4月7日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする