率直なところ、表紙を見て違和感があった通り、新境地というよりも中途半端な作品だった。
30代の女性が、突然くじ引きで大当たりしたら異世界に飛ばされ、10の願いを叶えてくれるという始まり。ユニークな設定はおもしろいけれど、離婚歴のある傷ついた女性を主人公にしたのがそもそも誤りなのでは…。RPG風のテンポを狙ったのか、主人公が不自然に明るくなったり、でも過去は取って付けたように不幸があるなど、全体的にちぐはぐしている。
明るい作風にしたかったのなら、いっそのこと主人公は少年か少女、10代の若者にすればよかったんじゃないかしら。宮部みゆきの『ブレイブストーリー』の向こうをはって、成長の物語にするとか…。
でも、私としては、主人公はそのままに、作風はいつものような独特の影と重みのある、余韻の味わえるものを読んでみたかった。作者にしか書けない、「夜市」のような哀しさと影のある異世界を、大人のための重厚なファンタジーをしみじみと楽しみたかったな。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
た行
- 感想投稿日 : 2014年10月31日
- 読了日 : 2014年10月31日
- 本棚登録日 : 2014年10月31日
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