天才たちの科学史―発見にかくされた虚像と実像 (平凡社新書)

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  • 平凡社 (2011年5月14日発売)
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天才科学者として、ケプラー、ガリレオ、ニュートン、ラボアジエ、ダーウィン、メンデル、フーコー、パストゥール、コッホと関連人物を取り上げ、それぞれの業績や生涯を紹介している。

ケプラーが3つの法則を発見する背景には、ティコ・ブラーエが蓄積した観測データがあったこと、ガリレオの最大の業績は落体運動の法則の発見であり、天動説の主張や木星の衛星の発見などはとるに足らないものであること、ニュートンは20代前半で万有引力を発見したが、ケプラーとガリレオの成果を統一的に説明したに過ぎず、自ら実験した光学の研究では成果をあげられなかったこと、メンデルは統計的に処理する能力に優れており、死亡時は気象学者として評価されていたことなどに驚かされる。

進化論については、ダーウィンの業績を「誰でも思いつくこと」で「欠陥だらけ」などと一蹴する一方で、先人のラマルクを巨人として称賛・擁護しており、そういった見方もあるのかと思わせる記述になっている。

ラマルクが晩年(19世紀初め)に出版した「人間の実証的知識の分析」の中で「人類は(中略)先見の明のない利己主義に陥り、自らの種を絶滅させることに精を出している。土壌を保護していた植物を伐採し、そこに住んでいた動物を追いだし、地球の大部分を不毛の地にしてしまった」と述べている部分は、氏の視野の広さを感じさせる。

周辺の人物を含めても20人くらいしか登場しないので、ポイントをつないだ大きな流れはつかめるが、科学史というには無理がある。中心人物の職歴や周囲の人物との論争や支援者との関係、当時の社会情勢などは詳しく迫っているので、その点が読み応えがあった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2011年9月27日
読了日 : 2011年10月11日
本棚登録日 : 2011年9月27日

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