国語と英語のカリスマ教師が教える AI時代の読む力

  • 宝島社 (2019年8月24日発売)
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最近、読解力に関してショッキングなニュースが、話題になった。新聞から、引用すると、

経済協力開発機構(OECD)は19年12月3日、世界79カ国・地域の15歳約60万人の生徒を対象に2018年に行った学習到達度調査(PISA)の結果を公表した。日本は「読解力」が15位となり、前回15年調査の8位から後退した。「数学的応用力」は6位(前回5位)、「科学的応用力」は5位(同2位)になったが、世界トップレベルは維持した。

というニュースだ。このニュースが話題になる一ヶ月前に、書店でこの本を読んだ。出口氏は、大学受験の現代文のカリスマ講師で、木村氏は、灘高校の英語の先生。お二人も、日本語と英語と、読解する言語は違えど、似たような問題意識を持っている。

つまり、日本人の読解力低下に歯止めがかからないと。
読解力とは、何か?実は、これに関しては、万人が納得する定義は存在しない。ある問題を設定して、それに関して正誤の基準を作り、点数を捻出して指数化する、その数値を読解力といっているだけである。それは、PISAの試験でも全く同じである。つまり、読解力が、どうしたら上がるのかと言うのは、よくわかっていない。なぜなら読解力という概念自体が定義できないからだ。

お二人は、家庭教育における読書の重要性を叫ばれているが、現在日本人の一ヶ月にかける読書費用は、新書一冊分の850円である。これが少ないか、多いかは、判断できないが、個人的には、少ないと思う。

読解力が落ちた原因は、よくわからない。
ただ、今のネット社会と非常に強い関連性があるのは、なんとなくわかる。読む文字量と打つ文字量は、以前とは、比較にならないぐらい、多いと思う。よって文字の量と読解力は、比例しない関係ということがわかる。

ネットで書かれていることを読んだり、
またSNSでチャットしているとき、脳は、読書をしている時と比べて、活動領域が限定している。また、ネット上の文章は、
論理性もへったくれもない文や、誰が書いたのか、
全くわからない文が、99.5%である。こんなものを、毎日、毎日、見たり、また打ったりすれば、読解力が下がらない方がおかしい。

PISAのやり方やデータの取得に関しては、各国に色んな思惑があるだろうから、立ち入らないが、ネット規制に関して、日本のやり方は、絶望的にまずいとは思う。

中国や韓国は、早い時期から、未成年以下に関して厳しいネット規制をかけてきた。しかし、日本は、ほぼ何もしていない。その対応の不味さが、読解力の低下を招き、歯止めがかからない状況なのだろう。読解力の低下は、今の日本の未成年に対する態度そのものだと思う。

例えば
スマホは、カジノが手元にあるのと同じような状況を作り出すことができる。自分の欲望をすぐに叶えてくれるガジェットだ。こんなものを小学生からイジることができる日本という国は、本当に終わっていると思う。日本の子供は、気の毒でしょうがない。

読解力が下がるなら、まだ以降に、取り返すことは、可能かもしれないが、スマホに自分の貴重な人生の時間を費やしたら、人生の質まで下がるだろうと思う。読解力の低下は、あくまでも1つの現象だ。しかし、水面下では、若者の間で、もしかしたら小学生の段階で人生格差、つまり未来に対して多くの選択肢がある人と、そうではない人の絶望的な格差が、この国で進行中なのではないか。

この代償は多岐に渡るが、一番の被害者は、子供で、彼らが大人になって、さらに、どうしていいかわからない状況に見舞われるだろう。その代償は、社会全体が負うことになる。これは、本当に残酷なことだと思う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2019年12月6日
読了日 : 2019年12月6日
本棚登録日 : 2019年12月6日

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