黄金の王白銀の王

著者 :
  • 幻冬舎 (2007年10月1日発売)
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感想 : 114
5

1冊で完結する、壮大な物語。
血で血を洗いつづける恨みの応酬を、年若い二人の王が水面下で手を組んで陰で協力しあい、お互い(の血族)を憎みあい殺し合うことが当然である世界を変えてゆこうと誓った。
しかし、何代もの間に積み重なった怨恨はすでに習慣に近く、昇華するのは容易でない。
自分たち一代ではおそらく実現できないであろうこと、
だからこそ自身らがいなくなった後のことまでを瞠るかし、何事にも揺らがず、茨の道を往く薫衣(くのえ)の凛とした姿。
私情を一切挟まず正しく国を統べるための礎を築き続ける穭(ひづち)。
二人が同じ時代に生き人生を賭したからこそ為し得られたことは生半可なことではなく、その犠牲の上に訪れた平和の頑健さは疑うべくもない。

(今の政治家たちにこの本を読んでもらいたい!)

読み始めこそ、名前の漢字の難しさに辟易し、
異世界ファンタジーの舞台に時折差し込まれる「現代で言えば」という言い回しに、少しばかり興を削がれてしまった感は否めないけれど、
気づけば二人が思い描いた未来を私も観たい、という想いにページを繰る手が止まらなかった。

血筋ゆえ、なかなか素直になれなかった薫衣と稲積(にお)夫婦の純愛ぶりと睦まじさは、厳しいばかりの現実に、少しだけのほっこり要素。
でもそこは大事!

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2012年10月7日
読了日 : 2012年10月7日
本棚登録日 : 2012年10月7日

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