「ヒリヒリする山」、8000メートル級の山稜が持つ意味をこれ以上に的確な表現した言葉があるだろうか。マロリーの「Because it's there.」のように、登攀者に余計な言葉は要らない。最善を尽くしても山嶺を望めない、神に愛されているか否かが支配する世界。
「エヴェレスト南西壁冬季無酸素単独登攀」という人類未踏に挑む羽生と、山に魅せられた者として後を追う深町。一つひとつの文章が躍動的で時に息苦しい。「ヒリヒリした山」が読者に伝染する。画家がキャンパスに命を刻むように、登攀者が山に命を賭けるように、著者は魂を削って本書を描き上げた。
トレッキング程度の登山しか嗜んだことはない私だがが深町の語る「濃い時間」を味わってみたくさせる。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
文学
- 感想投稿日 : 2015年9月13日
- 読了日 : 2015年9月13日
- 本棚登録日 : 2015年8月28日
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