30年以上前の本なので中東の景色は当時と随分変わってしまったが本書の凄みは色褪せない。
モサド創設者のイサー・ハレル氏、現モサドの潮流を築いたメイア―・アミット、伝説的モサド・エージェントであるウォルフガング・ロッツ氏という錚々たるメンバーへのインタビューにまずは驚かされる。特にハレル氏がジェームス・ポンドを「稚拙」と一蹴するのは本物ならではの説得力がある。インタビュアーとしての落合信彦氏も緻密な周辺取材と事実調査を重ね十分な勉強のうえ鋭い分析と見解をぶつけて良い回答を引き出しているのも印象的だ。
本書を読むと日本人にとっては理解が難しい中東問題の「緊張感」が伝わってくる。ユダヤ人国家建国を渇愛しながらもイスラエル・パレスチナ問題を抱え、国境線を隣して抹殺を公言する4カ国に囲まれる複合的且つ非常に不安定な要素がモサドを世界最強クラスの情報機関たるものにしている。ハレル氏がモサドの優秀な諜報機関たる理由を落合氏から聞かれたとき「そうならざるを得なかった」という回答は重みのある象徴的な言葉だ。平和を獲得し維持する対価は決して安くはないのである。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
ノンフィクション
- 感想投稿日 : 2018年1月30日
- 読了日 : 2018年1月31日
- 本棚登録日 : 2018年1月29日
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