英文収録 茶の本 (講談社学術文庫)

  • 講談社 (1994年8月10日発売)
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感想 : 50
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岡倉天心こと、岡倉道三が1906年に執筆、日本人の心について「茶道」の文化から迫る。
本書は英語の原文と日本語訳の両方があるが、ひとまず日本語を読了。
内容は抽象的で、難しい言い回しが多く、一度読んだだけでその内容を把握することは困難である。
しかし、冒頭の文章で、その言わんとすることの概要はわかる気がする。少し長くなるが、引用したいと思う。

「茶道は、日常生活のむさ苦しい諸事実の中にある美を崇拝することを根底とする儀式である。それは純粋と調和を、人が互いに思いやりを抱くことの不思議さを、社会秩序のロマンティシズムを、諄々と心に刻みつける。それは本質的に不完全なものの崇拝であり、われわれが知っている人生というこの不可能なものの中に、何か可能なものをなし遂げ用とする繊細な企てである」

つまり、不完全なものに見る完成の姿を夢想し、余計なものを排除する侘びの精神を言っているのだと思う。
最後の章では千利休の最期で締められていることからも、天心が「どうにもならない絶望的な状況を受け入れ、そこに美しさを見出そうとする」精神に着目していたのかがよくわかる。

また、本書の素晴らしいのは本編(日本語)の後にある訳者による「解説」である。
訳者は、岡倉天心が書いた文章をもとに、本当に描かれているのは日本人の心であるのと同時に、天心本人の波乱万丈の人生から得た苦悩、悟りのようなものも込められているという仮説を展開する。
2度の不倫劇に端を発する失脚やその後の顛末(不倫相手の死)など、彼の破天荒ぶりや絶望、諦めなど様々な想いが錯綜していることが改めて浮き彫りになり、この本が示そうとしたメッセージに、より深みが増す解説である。

なお、原文は気が向いたら読んでみようと思う。(いつになるやら・・・)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: お勉強
感想投稿日 : 2017年7月24日
読了日 : 2017年7月24日
本棚登録日 : 2017年6月27日

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