想い出すのは 藍千堂菓子噺 (文春文庫 た 98-4)

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  • 文藝春秋 (2022年7月6日発売)
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文庫書き下ろし

父と叔父が築いた上菓子屋「百瀬屋」が、父の死後叔父に独占され、追い出された晴太郎・幸次郎の兄弟が父の弟子茂市と興して、人を幸せにする菓子作りを目指す「藍千堂」シリーズ3作目。

第1話 梅薫る「ちいさ菓子」
材木問屋の若旦那が梅見に連れて行くと約束したものの、忙しさに取り紛れているうちに目の見えなくなった祖母のために「目を悪くしたものにも見える梅の菓子」を依頼してきた。
晴太郎たちは、梅酒に使った梅を摺り下ろして白あんに混ぜた小さな薯蕷饅頭を作って花びらの形に並べて杉の折に入れる。触れて、嗅いで、味わって祖母は梅見ができたと喜ぶ。

第2話 秘めたる恋の「かすていら」
売り出し中の人気役者が、思いを寄せる専属の髪結いのために、江戸の者とは違う故郷のカステラを作って欲しいと依頼してくる。
晴太郎は妻の佐菜に頼み、髪を結いを呼んで、雑談から身の上話をして故郷の土佐では蜂蜜を使っていたことを聞き出してもらい、再現に成功するが、食べた髪結いは幸せだった子供の頃を思い出して辛いと泣いたと聞かされ、晴太郎は落ち込む。

第3話
前の二人ともが、百瀬屋贔屓の旗本の弟の悪だくみで藍千堂を貶めるために利用されたことを、町廻り同心の岡が掴んできて、幕閣の有力者とつながる藍千堂贔屓の旗本から注意してもらったが、当の旗本兄弟が藍千堂に乗り込んで来る。
前に百瀬屋として晴太郎が出した白羊羹、父が作りたかった白羊羹、自分が作っている白羊羹を並べて味わってもらい、もとより詫びに来た旗本兄弟は十分に納得して、大団円。

最初に新たな登場人物が加わる。当時は忌まれた「双子」である兄妹尋吉(千尋)とお早(千早)は伊勢屋の紹介で、藍千堂が引き受け、叔父夫婦が去って手薄になった百瀬屋に入る。兄は事務能力に長け、妹は腕が立つ。今後活躍しそうなキャラクター。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 時代小説
感想投稿日 : 2024年1月5日
読了日 : 2024年1月5日
本棚登録日 : 2024年1月5日

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