酒田さ行ぐさげ 日本橋人情横丁

著者 :
  • 実業之日本社 (2012年1月19日発売)
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感想 : 19
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b「月間ジョイ・ノベル」に掲載された7短編の単行本化。

函館在住の主婦作家宇江佐真理は、こいうちょっと不幸だがその中から自分の幸福を見つけていくというけなげでホロリとさせる話がとても上手い。何度も候補になっている直木賞を是非取ってほしいと思う。

「浜町河岸夕景」では、亡くなった人の晴れ着を棺桶を覆う天蓋という布に仕立て直す天蓋屋の娘が、吝嗇で他人の悪口ばかり言う両親に反発し、仲のよかった煮売り屋一家の離散や、手習いの師匠の死、駆け落ちして一緒になっていたその妻が実家に戻らざるを得なくなったことなどを経験し、やがて幼馴染を婿に迎えて家業を継ぎ、穏やかな暮らしに小さな幸せを感じる。


「桜になびく」では、町奉行所の経理担当の同心が上司の公金横領の疑いの捜査という気の重い仕事を命じられ、不正は見つからなかったが飲み屋の女将を愛人にしているという上司の意外な一面を知り、商家に便宜をはからって袖の下を受け取っている姿勢に反発して、上司の引退後入札制の導入とい大改革を実施する。

表題作の第7話は、廻船問屋の同期の奉公人が、酒田に左遷されたと思っていたら豪商の一族の娘と結婚して酒田の店を買い取って主におさまることになり、見せつけるために江戸に来た。江戸店の番頭に昇進していた男は、優越感を打ち砕かれるが、引き抜きを断って江戸に留まる。その後持ち船が沈んで破産したことを聞いて複雑な思いにかられる。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 時代小説
感想投稿日 : 2012年3月6日
読了日 : 2012年3月6日
本棚登録日 : 2012年3月6日

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