コレクション 戦争×文学 4 9.11 変容する戦争 (コレクション 戦争×文学)

  • 集英社 (2011年8月5日発売)
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本棚登録 : 60
感想 : 7
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戦争文学を集成した「戦争×文学コレクション」のなかでも、「現代の戦争」をテーマに編まれた一冊。太平洋戦争やベトナム戦争あるいは冷戦のように「大きな物語」を持たず、そして歴史になるにはまだ時を経ていない、それだけに扱いの難しい現代の戦争に対して作家たちは如何にして対峙するのか。
個人的には、長く絶版状態だった楠見朋彦「零歳の詩人」が収録されてるというそれだけで嬉しい。一人称、三人称、詩、手記、ルポルタージュ、説明文、広告、メモ…あらゆる文体を駆使してユーゴスラビア内戦を描いたこの作品は、リアリティだとか戦争の悲惨さだとかそうした安易な思考を拒絶する。確かに悲惨な戦争は描写するが本作での商店はそこにはない。戦争を描写することで生まれるのは言葉と想像力への挑戦。ユーゴ内戦を扱いながら、そこで描かれるのはより普遍的な、語ること語られることの可能性。わずか130ページの作品ではあるが、決して読みやすくはない。普通の作品の何倍もの時間と体力とを使わなければ読み切れないしんどさがある。しかし、そのしんどさを超えるだけの言葉の力・可能性がここにはある。そのことを10年ぶりに読んで改めて実感した。
「零歳の詩人」のほかにもとがった作品が収録されてて、笙野頼子はいつものとおり全方位のファイティングポーズで爆笑なしには読めないし、島田雅彦はやっぱりインテリくさいしで、そのあたりも楽しめる。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2013年12月22日
読了日 : 2013年12月22日
本棚登録日 : 2013年12月22日

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