悪しき狼 (創元推理文庫)

  • 東京創元社 (2018年10月31日発売)
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本棚登録 : 171
感想 : 28

毎回楽しみにしているオリヴァーとピアシリーズだが、
実は、すぐに手に入れて、すぐに読むわけではない。
手に入れて、しばらく置いておく期間がある。
準備を整えたいのだ。

気持ちの、気分の、体調の、時間の、場所の、環境の・・・・・・そんな色々の。

というのも、このシリーズ、毎回テーマは軽くない。
ナチ、冤罪、環境問題等々、一筋縄ではいかない、考えさせられるものばかりだ。

その上、はじまりが必ず不穏なのである。
事件に関わる人々の状況も落ち着かないし、
オリヴァーやピアの周辺もなんだか穏やかではないし、
どう関わるかまだ分からない人々も、それぞれなにかを抱えている。

なにか起こりそうだが、まだなにかは明らかではない、
でも必ず不幸が訪れそうな、この落ち着かない状況が、
それぞれ登場人物ごとに描かれるのだ。

正直、ストレスである。
それに堪えて読んでいくために、上記のような色々を整えておく必要がある。


「だったら読まなければいいじゃない?」

もっともな問いである。
それにはこう答えよう。


「だって、面白いんだもの!!」


テーマは重く、人物は多数、ひどい事件があるにも関わらず、
このシリーズはどの巻も、立派なエンタテイメントになって、
信じられないことに、読後感がよいのである。

だから読みたい、止められない。
前半は呼吸を整えつつ、
後半は息を詰めて一気読み。

『悪しき狼』も期待どおりだった。


「あなた、早く戻ってきて、早く家に帰ってきて」

とは、作中に出てきたドイツのヒット曲である。(446頁)

シリーズファンの大半が、近頃のオリヴァーについて、とにかく気をもんでそう呼びかけていただろう。

この巻で「おかえりオリヴァー」と言えてよかった。
これで、ちょっとは安心して、次の巻を待つことができる。

件の歌はこちら
Junge, komm bald wieder  Freddy Quinn
https://www.youtube.com/watch?v=6Ag3QNdomuQ

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2018年11月20日
読了日 : 2018年11月20日
本棚登録日 : 2018年9月23日

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