華族誕生: 名誉と体面の明治 (中公文庫 あ 54-1)

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  • 中央公論新社 (1999年11月1日発売)
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明治20年前後に華族制度が生まれ約500家が5爵に分かれて叙爵されたその背景。そして不満に思った人たちの運動とその結果。名誉に拘る旧家の人たちのプライド、執念。そしてその餌を使って巧妙に新政府への不満を和らげて行く伊藤博文と三条実美。三条は名目的な政府NO1としてこの華族制度においては唯一発言できた。そして自ら公爵にも。公爵になった基準として5摂家のほか、徳川宗家、島津、毛利家の選ばれた理由。侯爵になった御三家、伯爵になった御三卿など徳川には暖かい処遇が行われた背景。摂家・清華家・大臣家・平堂上家(その他貴族)の過去からの長い歴史の格差、明治維新の功労への配慮、南朝の忠臣として叙爵された新田、名和、児島家。歴史を深く学ぶ上でも実に興味深く読みました。明治維新の際、偽勅を薩摩、長州へ伝えた功労者として嵯峨実愛、中御門経之が伯爵から侯爵への「昇格」を果たした話は同格であった中山忠能との差に拘った結果であったとの一連の話が最も興味深かったです。そして最後に天皇制を守ったものは結局華族ではなかった、むしろ、15年戦争の責任を負うべき人が近衛であり、西園寺であり、所詮、華族は徒花に過ぎなかったとのオチにウーンなるほどという感。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 日本史
感想投稿日 : 2013年8月24日
読了日 : 2003年5月30日
本棚登録日 : 2013年8月24日

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