中国共産党の経済政策 (講談社現代新書)

  • 講談社 (2012年12月18日発売)
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感想 : 11
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 本書を読んで、「中国」はもはや内部が見えない謎の国ではなくなったと思えた。
 中国は「社会主義市場経済」という「特色ある社会主義」をかかげ、「共産党一頭支配」という日本から見ても異質な政治体制をとっているが、かつては見えなかったその内容がすでに既知のものとなり、研究されつつあることが本書でよくわかる。
 「政経一体システム」という中国独特の体制は、今までの世界の歴史の中で、ほかにあったのだろうか。
 本書では「中国の政経一体システムの最大の強みはスピードと実行力にある」とし、「激しい混乱が発生する経済危機への対応において特に効果を発揮した」という。
 確かに2008年のリーマン危機以来の経済危機への機動的対応などを読むと、実に素早くかつダイナミックである。
 また、「共産党」と「政府」との関係や「党のヒエラルヒー」の構造には「政治体制としての安定性と競争的な人材育生システムを両立する手法を、独自のスタイルで確立しているのが中国式」であるという。
 これを読んで思わず「日本の政治」と比較してしまった。「財政」や「年金」、「政府」と「国会」、「選挙制度」などに多くの問題点を抱えながら、一向に改革が進まない日本。「2世議員」ばかりで劣化しているとしか思えない日本の「政治家」。
 民主主義が確立されている日本は、政治体制として一党独裁の中国よりも優れているはずではなかったのかと、自問してしまった。
 本書で、明らかにされている中国の「政経一体システム」は、すくなくとも危機対応において日本よりも優れているようにさえ思えた。
 「国家指導者人事」で中国の政治体制を考察し、「経済政策」で中国の経済を明らかにしているが、GDPの比較として「2017年時点で米国は約19.7兆ドル、中国は20.3兆ドルとなり米中逆転がおこる」という。
 日本は既にGDPで中国に抜かれているが、数年後には、日本は、ますます巨大になる中国と対峙しなくてはならないのかと、暗鬱とした思いで本書を読んだ。
 本書では「日本は中国なしではやっていけないし、中国も日本なしではやっていけない構造になっている」とはいうものの、戦略的対応については「三国志」の国である中国の方がはるかに優れているように思える。
 どうも、本書で予想される今後の世界は日本にとって楽観を許されない世界になるようだ。
 本書は、中国の現状をよく知ることができる良書であるが、その内容は決して甘いものではない。
 しかし、中国をよく知る日本人はみな「親中派」になるように思えるが、そうならざるを得ないということなのだろうか。
 日本は、好き嫌いは別として中国と共に生きていかなければならないのだろうとは思うが、未来は苦難の道となりそうであると思えた。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2013年8月4日
読了日 : 2013年8月4日
本棚登録日 : 2013年8月4日

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