2050年の世界 英『エコノミスト』誌は予測する

  • 文藝春秋 (2012年8月3日発売)
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 「世界を変革するトレンド」によって「2050年の世界を予測する」という本書は実に説得力がある。
 しかも本書の描く世界は、大きな変化はありつつも、悲観的・破滅的な世界ではなく、「2050年の世界はそれほど悪い場所ではない」という。変化を予測しつつ、世界を見つめる視線を持つ本書は、ひょっとして「必読の書」なのかもしれないと読後に思った。
 「人口動態はある程度確実に未来が予測できる指標であり、すべての予測の基礎となる」とはまさにそうだろう。しかし「出生率は世界的に低下する・・・。2050年以降、人口の増加率は急減速し、ゼロに近づいていくだろう」とは、本当にそうなるのだろうか。
 「宗教はゆっくり後退する」という。「原理主義的勢力は退潮し、最終的に地球を受け継ぐのは無宗教の勢力だ」との予測が正しければ、現在世界の一部で猛威を振るう原理主義勢力は衰えるのだろうか。
 本書の「貧しければ貧しいほど宗教に帰依する割合が高くなる」との指摘はそのとおりと思えるが、世界はこれからもっと豊かになることができるのだろうか。
 そして「不確実性が高まる」や「教育が生産性を高める」など、多くの指摘に納得する思いを持ったが、「2050年までに経済の世界規模で上位7ヵ国に残るのはアメリカのみ。あとは中国、インド、ブラジル、ロシア、インドネシア、メキシコ」とは驚きとしか言い様がない。
 また、世界は「アジアの発展途上国全体で世界の生産高の半分近くを占めるようになる」という。この世界へと進む過程の政治的経済的軋轢は相当のものになるだろうとの感慨を持った。
 「各国間の格差は縮小し、国内の格差は拡大」するというが、日本は人口の減少により「人口一人あたりGDPも、米国を100とすると、韓国の105に比べて日本は58に沈んでいく」という。
 どうやら「2050年の世界」は、日本にとっては住みやすい世界ではなさそうである。
 本書は400㌻以上のボリュームで「人口・言語・宗教・経済・ビジネス」等を詳細に予測しているが、このような企画を実現しているイギリスの週刊誌はすごいとしか言い様がないと驚嘆した。本書を高く評価したい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2013年2月12日
読了日 : 2013年2月12日
本棚登録日 : 2013年2月12日

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