「生きがいを持っての社会参加」とまで「仕事」というものを神聖視するつもりはないが、本書の表題の「10年後に食える仕事と食えない仕事」というテーマは、なんとも身も蓋もない「品のなさ」を感じてしまう。
しかし、「仕事」というものの風景が現在ではだいぶ変わってきていることも実感していることもあり、本書を手にとってみた。
「フラット化する世界」でわかりやすく考察している「グローバル経済が世界を変えている現実」は確かにあるが、本書で主張するようにそれが明日にでもすべてにわたって世界を変えるのだろうかという疑問を持った。
「日本から消える計算事務員」として「日本IBMが経理、人事、給与、福利厚生にかかわる計算事務業務とそれを支える情報システムや、その保守管理業務を、まるごとセットで大連に移してしまって、コストを半減させませんかというえげつないコンサルティングを行い、成果をあげている」という。
確かそういう事実はあるだろうし、「コールセンター」の多くが人件費の安い中国などに移転している事実もあるとは思うが、マクロ経済書等を読むと、日本の潜在成長率は極めて低いままであり、日本の産業界がすべて上記のコスト削減を行っているようには到底思えない。
いずれは「世界はフラット化」するだろうが、現在の世界を見るとまだまだ相当長期間の時間がかかるというのが順当なところなのではないだろうか。
本書を読んで、それぞれが「学習してキャリアアップ」を図ろうとすることは良い事とは思うが、本書の価値観を共有すると「周りはみんな敵」という情けない人間になりはしないかと、ちょっと懸念をもった。
本書は、現実の一面のみを切り取り強調している懸念が残る、残念な本であると思う。
- 感想投稿日 : 2013年2月16日
- 読了日 : 2013年2月16日
- 本棚登録日 : 2013年2月16日
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