本書は、「経済学」と「家族社会学」のコラボという面白い視点の本であるが、現在の日本の置かれた現状を鋭く指摘していると思えた。
著者たちの本書の主張は、どちらも分かりやすい。
「家族社会学」の山田氏の「家族のありかた」についての見解には、同感しつつも「これからの日本はどうなるのだろうか」という不安でいっぱいになるような読後感をいだく。
そして「経済学」の塚崎氏の主張には、納得しつつも将来の見方としてはポジテブ過ぎるのではないかと思った。
「長期停滞に陥った日本経済」や「変容する家族と噴出する諸問題」のテーマには、「まったくそのとおりだ」と頷いたが、現実の日本では、それへの改革は全く進んでいない。
これはおそらく、かつての「総中流」の時代と違って、人々の格差が進むことによって、かつての生活を維持できている人々と困窮化している人々に二分化されている社会の現状があるためではないかとも思った。いわゆる「勝ち組」と「現状維持派」は急激な変革は望まない。
また、「10年後、20年後の日本経済」では、極めて楽観的な考察が展開されているが、これは甘すぎる見解なのではないか。
「危機を回避するための処方箋」には、それなりの説得力はあるが、本書で紹介される「オランダモデル」が日本に導入されるとも到底思えないし、年金改革にしろ、少子化対策、正規労働者と非正規労働者の格差是正が、おいそれとできるとは到底思えない。
本書は、現在の日本の姿を浮き彫りにした良書であると思うが、その結論の行き先は本書で扱っていない「政治」にあることがはっきりわかるという点ではちょっと不満が残った。
- 感想投稿日 : 2013年1月20日
- 読了日 : 2013年1月20日
- 本棚登録日 : 2013年1月20日
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