本書は、科学史の巨人達の姿を多くのエピソードとともに明らかにしたものである。ケプラー・ガリレオ・ニュートン・ラボアジエ・ラマルク・ダーウィン・メンデル・ナポレオン三世の紹介された実像は、一般に知られている姿とはだいぶ違っている。
本書によると、これらの科学史の巨人達は、みな「変人」だったようだ。まあ、これらの人々は、「人柄の良さ」で歴史に残っているわけではないし、最近の有名な科学技術の開発者にもだいぶ変わっている人もいることだから、そのようなとんがった変人でなければ、科学上の偉大な発見などはできないものだとも思えた。
ただ、本書はそのような「天才達の虚像と実像」を紹介しているが、読んでみてちょっと物足りない。もっと、これらの天才達の成果が社会に及ぼした考察や科学史上の位置などの考察を読みたいとも思った。
著者は、あとがきで「数年前から、講義を受ける学生の質が急に変化した。…無感動・無関心な態度を示すのである」と記し、その原因として「ゆとり教育の後遺症、理科教育の教科内容、教師の質、現代人の科学離れ」等を指摘しているが、科学を知的に楽しむように教育・紹介できない学者・教育者のほうに問題があるではないだろうかとも思った。
本書を読んでも、あまりワクワクするような思いはもてないし、知的興奮も感じられない。過去の巨人達のエピソードには、それなりの関心を持つものだが、もっと知的興奮を覚えるような切り口はなかったものかと感じた。本書は残念な本であると思った。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2012年3月20日
- 読了日 : 2012年3月20日
- 本棚登録日 : 2012年3月20日
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