白光

著者 :
  • 文藝春秋 (2021年7月26日発売)
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江戸時代に生まれ、明治維新後、笠間県(茨城県)となった地で、武士の長女だったりん。縁談などもってのほか、ただ絵を描きたい。そのために生きると決めた。やがて日本で初めての聖像画家、西洋画家となった。
ニコライ教主との縁でロシアへ渡り、滞在した修道院では求めた西洋絵画の技術が得られないまま、失意のうちに帰国したりんは、やがて自分にはなくて、ロシアの修道女たちが持っていたものに気づき、一時はニコライのもとを離れるが、再び聖像画家となる。
りんは、激動の明治から大正をロシア正教とともに生き、多くの聖像画を残したが、関東大震災で失われたものも多かった。
実在の人物を描いたものなので、創作の範囲は限られるところもあろうが、想像力を駆使して描かれた描写には、事実とは別のリアルさが感じられる。りんの意志の強さ、気性の激しさ、一途さが、読むはしから伝わってくる。
ニコライ主教はじめ、西洋画を学び、のちに赤飯印刷を興す山室政子など、他の人物たちも魅力的だ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 朝井まかて
感想投稿日 : 2023年1月9日
読了日 : 2023年1月9日
本棚登録日 : 2023年1月9日

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