三人の女性の幼少期から晩年までを綴った、史実を基にしたフィクション。戦争について描いた小説はたくさんありますが、一人一人の人生について、徹底した取材を基に、ここまでリアリティをもって物語る小説には初めて出会いました。
中国残留孤児、戦争孤児、在日朝鮮人。知識としては知っていましたが、そういった人々が何を経験し、何を感じたのか、本当の意味では何も知らなかったのだと、この小説を通して改めて感じさせられました。作者の筆致は淡々としていますが、そこに語られる事実の壮絶さに圧倒されますし、胸が痛くなります。そして、戦争が個の人生を否が応にも変えていってしまうその無慈悲さを、ただそうであるものとして描き出そうとしている作者の覚悟にも、感服させられます。
三人の主人公の人生が一瞬交錯して、物語の最後にまた繋がる展開は、人と人が国籍や思想を越えて、繋がることができるかもしれないという希望を描き出しています。もちろん、その道のりは並大抵のものではないのですが…。戦争に翻弄されながらも、そこで生きていこうとする人々の人生を濃密に描き出した本作品。たくさんの人に読んでもらえるといいなと思いました。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2020年10月14日
- 読了日 : 2020年10月14日
- 本棚登録日 : 2020年8月10日
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