<ここまで来て、初心に還る>
「すくなくとも、塩一トン。」
須賀敦子さんに、イタリア人のお姑さんが言った喩え★ 人一人理解しようとしたら、塩一トンを舐めるくらい長い長い時間がかかるのだと……。それは古典文学にも当てはまるのではないかと、須賀さんは書いています。
ただただ飢えて、がつがつと活字をむさぼり読んでいた私は、本に対する態度をどこか間違えていたのかもしれません。随分あさましい読みかただったのでしょう。人を好きになるときも、好きになれないときもそう。何かこう、がつがつして、勝手にせつながって、やけに性急に結論を出そうとしては失敗してきたような気がします。
須賀さんの、気品に満ちて冷静な文章を尊敬している一方で、歪んだ姿勢をぴしりと正されるような気持ちになり、どうも、いたたまれない……★
「一冊の本を読み終えるのに、どのくらいの時間がかかりますか?」
そう聞かれたら、どう答えるでしょうか。私の答えは「1日」だったことが多いし、「2時間」だったこともあった、ひどいと「30分」だったこともあった。でも、それがたいへんな傲慢だったのじゃないか!? と初めて思い、怖くなりました。読むことと目を通すことは違うことを、ずっと分かっていなかったのです。
我が身の軽率さを思い知らされたな。一冊一冊、どれもが大事な友人だというのに、恋人に近い愛読書にさえ、私は不実でした。
自分でも忘れていましたが、「レビュージャパン」を始めた時、はじめの一冊に選んだのは『スロー・イズ・ビューティフル』でした☆ これからはじっくりスローリーディングで、それこそ「一トンの塩を舐める」ように物語とつきあってみたいです。好きなら理解したいですからね☆(別に速読が悪いという意味はありません★)
好きな本なら、読み終わることなどないのに違いない。
いっぱい間違っていた。もう一度、書物を愛し直してみたい。できるでしょうか?
- 感想投稿日 : 2014年2月13日
- 読了日 : -
- 本棚登録日 : 2004年2月15日
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