良薬口に苦し?!
すばらしい書物との出会いは、深い慰めと癒しをもたらしてくれます。本の外の音が聞こえなくなるほど物語にとりこまれて、何時間も帰ってこないときの至福感! そののち、ここで大量の感想文を書きちらすに至っている、激しい活字中毒者の私なのです。
ただ、この読みかたでいいのか? 疑問も感じ始めています。何でも読んでどれでも興奮しているだけでは、自分に思想がないかな★
果たせるかな、セピア色の写真(表紙)の中から、ヘッセ先生は眼鏡の奥で厳しい目を光らせていました。ヘッセは乱読者を好まないのです。
「ザルに水を注ぐように何でもかまわずせっせと読みつづける貪欲な読者がいる」――ザル疑惑。本好きと活字中毒は違うのですね。
「小説の中の出来事を、そのサスペンス、そのスリル、そのエロティシズムや、すばらしくて魅力的なものか、気が滅入るほど惨めなものかによって評価する。あるいは、作品と作者の芸術家としての力量を、結局は常識の域を出ない一つの美学を基準にして評価するのである」――鋭いご指摘です。
「少しヨーロッパ風のイルミネーションで彩られたいろいろな理想」も、翻訳物を読む際の妨げになっているかもしれず、凹みました……。
にがい味がしたのは良薬だからと信じよう★
しかしヘッセは薬にマーマレイドを添えてくれたらしく、薦める本や作家の名は好いものばかりでした。
・ペトラルカのソネット。美しい!
・ワグネリアンが反応する『ニーベルンゲンの歌』『トリスタンとイゾルデ』は間違いないそう。
・英国詩人ではシェリーとキーツが別格扱いだった。
・フランス文学ならスタンダール。
・スカンジナヴィアはイプセン。
・ロシア文学の扱いも納得。
そんなに趣味が外れてはいなかったので、引き続き気になる作品を追いながらも粗い読みかたを何とかしようと、自分の乱読を戒めたのでした。
もっと深く味わって読みます☆
- 感想投稿日 : 2015年6月20日
- 読了日 : -
- 本棚登録日 : 2006年7月18日
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