少年・バスチアンが古本屋で手に取った『はてしない物語』。その物語の国“ファンタージエン”は虚無に飲み込まれて滅亡の危機に瀕していた。もう一人の主人公の少年・アトレーユはその滅亡から世界を救う手立てを探す旅に出る。
バスチアンとアトレーユの視点が交互に描かれる演出が、読み手の臨場感を加速させている。読者の自分が物語にのめり込んでいく姿がバスチアンと重なってくるよね。それが『はてしない物語』という構造を見事に利用した演出にもなっていて素晴らしい。勇気がなかったバスチアンがアトレーユの冒険を読書体験し、少しずつ自分の勇気を振りしぼっていく姿がよかった。
そして、何よりもファンタジー世界の生き生きとした描写たちのすごさ!ファンタージエンという架空の世界なのに、目の前に浮かんでくるような躍動感がある。自分の想像力を回転させる気持ちよさにあふれている作品だと思う。その下地があるからこそ、メタフィクションとしての演出の説得力にもなっているんだよね。
上巻はまさに二人の少年の運命が合わさるところまでが描かれる。虚無によって蝕まれ続けているファンタージエンをバスチアンは救うことができるのか。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
小説
- 感想投稿日 : 2020年8月19日
- 読了日 : 2020年8月19日
- 本棚登録日 : 2020年8月19日
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