宝石強盗大量殺人・天銀堂事件。その容疑者の椿元子爵が失踪した。「これ以上の屈辱に耐えられない」娘・美禰子への遺書の真意とは。そして、書き残した「悪魔が来りて笛を吹く」という曲が流れる時、椿家に悲劇が襲いかかる。
旧華族の没落、戦後という時代背景の中で巻き起こる陰惨な連続殺人事件、まさに横溝正史という世界観が楽しめる。固結びされた不可解な謎へ光を照らすほどに、その影が色濃く闇へと堕ちていく。悪魔ははたしてどちらだったのか。呪われた宿命の中でどう生きるべきか。闇に響く笛の音が耳に残る。
ミステリとしての仕掛けはシンプルなものの、その事件背景の描き込み、業の深さに魅入られたように読み進めた。タイトルに込められた真の意味を知った時の驚きといったら!決着の鮮やかさと伏線回収の爽快感もあって、最初にさんざん脅かされたほどの後味の悪さはなく意外と読みやすかった。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
小説
- 感想投稿日 : 2021年4月20日
- 読了日 : 2021年4月20日
- 本棚登録日 : 2021年4月20日
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