団地内にプライバシーを暴露する怪文書が横行し始めた。その相談を受けてやってきた金田一耕助。その矢先、団地のダスター・シュートからタールまみれの女性死体が発見される。村から団地へと舞台を変え、複雑さを増した事件に金田一が挑む!
生々しく秘密を暴露する怪文書!顔が判別できず過去も定かではない死体!「白と黒」という言葉に隠された意味とは!近くて遠い団地内での人間関係。隣に住んでても扉を閉めればわからない。まさに人間の心を象徴しているよう。個々人が抱える秘密が密接に絡まり合って、大きなパズルを完成させていく。
横溝正史が今まで描いてきた村社会的な土地に染み付いた過去が生みだした事件ではない。新しく完成した団地に住む人々はまっさらな生活をそこで始めていく。ただ、それでもそこへ来るまでの人生はそれぞれにあるのだ。それは火種となって、ふとした衝撃で目覚めるのを待っている。団地が起こした恐るべき人間関係の化学反応が見事だった。
終盤まで犯人がわからず、あやしい人だらけで困った(笑) キーワードとなる「白と黒」もまったくわからなくて、それが明かされた時は「ああー!」と思わず声が出てしまった。ちょっとした描写にも伏線が隠されていて、読み直すのが楽しそう。それにしても、事件は解決してもこの団地どうなるんだろ…って心配になる。事故物件すぎる(笑)
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
小説
- 感想投稿日 : 2021年5月24日
- 読了日 : 2021年5月24日
- 本棚登録日 : 2021年5月24日
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