悪魔の百唇譜 金田一耕助ファイル16 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA (2000年4月6日発売)
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感想 : 41
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深夜の高級住宅街に停まっていた車。そのトランクの中には胸を抉られ、血溜まりにトランプの“ハートのクイーン”を浮かべた女の死体が詰め込まれていた!捜査が進むにつれ、関係した女たちの性癖を記した“百唇譜”が発見された未解決殺人事件へと繋がっていく。金田一耕助は悪魔のような犯人を捕まえることができるのか?!

旅行の前に等々力警部へ顔を見せようと立ち寄った義理堅い金田一。それを渡りに船とこの事件の謎へと誘う等々力警部よ。鬼かよ?!と思いきや、事件解決後の金田一の孤独感を知るがゆえの行動なんだよね。人の罪を暴くことを生業にする仕事に罪悪感を覚える金田一を慮る等々力警部のやさしさがいいよね。まあ、事件解決を手伝わせることに間違いはないのだけど(笑)

トランクから発見される死体と意味ありげなトランプ!百唇譜という悪趣味極まりない記録!盗難された車にエンストした車の意味とは。露悪的でシンプルな事件かと思いきや、想像以上に複雑に絡み合った事件と人間関係の描き方はさすが。

金田一は活躍するもそこまで目立たない印象。ホームズ大好き女中の古川ナツ子や、他のキャラの方が爪痕を残していて意外だった。あと、いい感じの時間帯に塀へシャーシャーする目撃者が出てきたり、後出し情報が多かったり、結末がピリッとしないのは残念。李泰順のその後の話とかがあると嬉しかったなあと。練られた事件だっただけに惜しい一作。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2022年10月17日
読了日 : 2022年10月17日
本棚登録日 : 2022年10月17日

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